8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:29:30.76 ID:Gk/WojOoo
「ここにあった」
手のひらの上に指輪がキラリと光っている。二人は再び沸き立った。
もう一回もう一回とせがむのをなだめて、プロデューサーさんは指輪を指へはめた。
9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:29:56.28 ID:Gk/WojOoo
「ナナはとっくに準備していたんですけど」
「それならそうと言ってくれれば」
10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:30:28.13 ID:Gk/WojOoo
確かに、彼が仕事に対して真剣じゃないはずはない。それはよく分かってる。
余裕があるときはいつもレッスンを見てくれるし、
レッスンのあと「今日のナナはどうでした」なんて訊くと重箱の隅をつつくようにダメだったところを挙げていく。
事務仕事だって手伝っているようだし、自分でできることはなんでもやってしまう人。
11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:31:14.13 ID:Gk/WojOoo
「着きましたよ」
はっと目を上げると、オーディション会場のそばにある駐車場へ、車が立ち止まっていた。
私が助手席から降りても、彼はさも当然のようにハンドルを握ったままだった。
12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:31:58.13 ID:Gk/WojOoo
――――
番号で呼ばれるのも慣れたものだ。
その時々違う番号で呼ばれて、はい、と元気よく返事。
13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:32:48.62 ID:Gk/WojOoo
「遅かったですね」
プロデューサーさんは私を見て、デスクから腰を上げようともしないまま言った。
14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:33:17.63 ID:Gk/WojOoo
「なにか言わないんですか」
「ええ。次、頑張りましょう」
15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:33:46.18 ID:Gk/WojOoo
高いところだから、風が強かった。馬鹿と煙は高いところが好きだと言う。
じゃあ、もっと高いところへ登ってやろうと、屋上の隅にあぐらをかいている貯水タンクのはしごに足をかけた。
その頂上へ立ったとき、ちょうどプロデューサーさんが屋上のドアを開けた。
16:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:34:14.27 ID:Gk/WojOoo
「夢だったんですよ! ずっと、アイドルはぁ!」
私が言うと、プロデューサーさんは神妙な面持ちで言い返してきた。
17:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:34:43.81 ID:Gk/WojOoo
「それでもナナは! ウサミン星からやってきたウサミン星人なんです!」
「夢を与えたって誰もがそれを忘れる。そして、あとになって笑う。子ども騙しだと」
18:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:35:13.50 ID:Gk/WojOoo
「信じたものがそこにあるんだって、教えてくれたのは貴方じゃないですか!」
「誰も信じなくなった! ティンカーベルは消えた、ネバーランドも」
19:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:35:59.13 ID:Gk/WojOoo
「僕は……もう、子どもじゃないんだ」
「知ってます。私も貴方も、そう」
20:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:36:33.38 ID:Gk/WojOoo
お父さん、お母さん。すみませんでした。親不孝な子でした。
せめて、晴れ姿を見せたかった――。
思い出が次々に頭に浮かんでくる、走馬灯のように? というらしい。
21:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:37:03.55 ID:Gk/WojOoo
「助けてっ! ピーターパン!」
何秒経った? アドレナリンが……ああ、いや、それとももうすでに?
22:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:37:36.52 ID:Gk/WojOoo
彼は泣いていた。弱い月影に水銀のような涙を流して、彼は私の肩をしっかりと抱いていた。
「菜々は、本当に僕のことを信じてくれていたんだね」
23:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:38:22.13 ID:Gk/WojOoo
なんだか不思議な時間だった。なのに、妙に頭は冴えていた。
十時間くらい寝たあとみたいに。
涙で濡れた彼の頬を撫でると、ヒゲがチクチクした。
24:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:38:54.66 ID:Gk/WojOoo
以上、拙い文章でありましたが、読んでいただきありがとうございました。
25:名無しNIPPER[sage]
2015/05/11(月) 23:53:18.86 ID:sTfdkk7Co
乙、いい雰囲気だった
26:名無しNIPPER[sage]
2015/05/12(火) 01:15:28.85 ID:sGEuW+rxO
すごくよかった
おつおつ
27:名無しNIPPER[sage]
2015/05/12(火) 16:40:50.24 ID:ntNSSQRd0
乙。良い雰囲気の文章でした。
私はPと菜々さんのどちらにも入り込めずに、読んでいて何もこの話では心が動きませんでした。
「そりゃこの流れならこうなるだろう」という悪い意味で期待を裏切ってはもらえず、終わってしまい残念でした。
28:名無しNIPPER
2015/05/13(水) 09:31:04.05 ID:qcYqh0XjO
良いコピペだ
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