15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/12(火) 18:08:44.74 ID:+HxJNIVIo
◇
その夜。唯が指定してきた場所はカラオケボックスだった。
要は個室という環境が欲しかったのだろう。大学や寮のすぐ近くというわけでもないが、歩いて行ける距離だ。
ただ、そこまで一緒に行くのではなく、唯が先に部屋を取って待ってる、ということが私を不安にさせた。
もちろん一緒に行くとなればそれはそれで気まずい空気が流れることは間違いないのだけど、一人で向かうのもそれはそれで道すがら後ろ向きなことばかりを考えてしまう。
そもそも唯のほうから告げられる話、というものに心当たりがない。
別れ話以外には。
告白したのが私からだから、別れを告げるのは自分から……とでも考えて、唯は全てのお膳立てをしたのだろうか。
別れを告げられた私は、どんな行動に出るのだろうか。
悪いのは私の煮え切らなさなんだから、全てを黙って受け入れたい、と今は思っている。でもきっと、いざ告げられたら惨めに泣き付いたりするんだろう、私のことだから。
でも、出来ればその件で皆に心配や迷惑をかけたくはないな。
別れを告げられた後も、私が告白する前のような4人でいたい。そこに晶達や、来年には梓達も加えて、皆で楽しくやれたらいいな。
それが……きっと理想なんだろう、と思うばかり。
私の夢見てきた恋愛にも、読んできた物語にも、こんなシチュエーションは描かれていなかったから、何が正しいのかはわからない。
◇
……後ろ向きな思考の山に埋もれた私が、恐る恐る個室の扉を開いた先。
そこに座る神妙な顔をした唯が、同じように恐る恐る私に言い放った言葉は……
唯「……ごめん澪ちゃん! 憂達にバレちゃった!」
澪「……へ?」
唯「言いふらすつもりはなかったんだけど、「澪はそういうの嫌がるから」って晶ちゃんにも言われてたから、本当にそんなつもりはなかったんだけど、でも、昨日憂にそれとなく相談したらあっさりバレて……」
澪「…………」
唯「憂はもちろん誰にも言わないって言ってくれたけど、やっぱり私のせいだから、私が馬鹿だから、またいつこんなことになるかわからないから、その……」
澪「……………」
唯「その、澪ちゃんが、迷惑だって言うなら、わ、わたしは、嫌われても、別れられてもしょうがないって、おもいます……っ、ぐすっ」
……なんか、唯が泣いてる。
泣きたいのは私のほうなのに。きっと意味は違うだろうけど私も泣きたいのに、唯が先に泣いてる。
えっと……なんだ、こういう時、どうすればいいんだろう……?
まあ、とりあえず……
澪「……はあぁぁぁぁ」
とりあえずホッとしたので、ものすごい溜め息と共に唯に抱きついてみた。
唯「み、澪ちゃん!?」
澪「……私のほうが、別れ話を切り出されるとばかり思ってたよ」
唯「な、なんで!? 澪ちゃんは何も嫌なことしてないし……」
澪「でも、するべきこともしてないから。だから唯に嫌われたかなって思ってた」
唯「するべきこと、って…?」
澪「……今夜、唯の部屋に行ってもいい?」
唯「えっ? う、うん……」
澪「そして……その、えっと、あの日みたいな、甘くとろける、チョコレートみたいな時間を、二人で過ごしませんか…?」
唯「………」
澪「………」
唯「…………」
澪「…………」
唯「………ぷっ」
わ、笑われた!?
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