7: ◆agif0ROmyg[saga]
2015/05/20(水) 15:41:57.12 ID:ee6XzjKY0
文香と頼子の次なるイベントの企画書を完成させた後、俺は事務所に居残っていた。
一つ相談に乗って欲しいと文香に頼まれたからである。
既に他の者たちは帰宅し、オフィスには俺たち二人きり。
いつに無く頬を赤らめた文香が、おずおずと切り出した。
「あの……私、最近ずっと苦しかったんです。プロデューサーさんに、助けてもらいたいんです」
「苦しい? なんだ、仕事が多すぎたか? すまん、調整ならするが」
「いえ、そうではないのです。アイドルは楽しいのですが……」
言いながら、文香はこちらへにじり寄ってくる。
すっと身体を寄せられ、顔がくっつきそうな近距離。
身体を引こうとしても、その度に文香がぐいぐい近づいてきて、全く距離が空かない。
「ふ、文香?」
「私、もっとプロデューサーさんと一緒にいたいんです。だから、知らない女の人とあんまり楽しそうにしないで欲しいんです。いけませんか?」
「お前、それどういう意味……」
「わかってくれますよね。私を見出してくれたあなたですから。私が言いたいこと……理解してくれますよね」
青く深い瞳が涙で潤んでいる。
じっとこちらを見上げる目つきは熱を帯びている。
19歳の美女に求愛されていると気付くのは容易い事だった。
「し、しかし文香、俺は……」
「分かっています。アイドルとプロデューサーはお仕事をする関係ですから、一線を引かないといけませんね。
でも、分かっていてもダメなんです」
いつも真面目で物静かな文香が、今日に限って異様な迫力を見せている。
彼女の首、胸元から漂う芳香が、まるで理性を刈り取るような艶かしさだ。
呼吸するたびに彼女の匂いや吐息が肺に染み込んで来るようで、どんどん身体が熱くなる。
一職業人として、アイドルたちと深い関係になるなんて許されない事だ。
しかしそんな矜持も、文香の魔力で侵されていく。
「あなたに会うまで私は、本に囲まれて独りで生きていくものだと思っていました。
でも、今はもうそんなこと、考えられません。
ずっとあなたと一緒にいたいんです。お傍に置いて欲しいんです。
私のわがまま、聞いてもらえませんか?」
軽く背伸びすると、文香の身体が俺に密着する。
胸を押し付けられ、首元からの香りを吸い込まされると、鼓動が高鳴って何も考えられない。
肩を震わせ、ひどく不安そうな文香を思わず抱きしめた。
「……!」
「文香……! ダメだな、俺は。こんなとき、ちゃんと断ってやらなきゃいけない立場なのにな」
「では……」
「ああ。みんなに言えるようになるのが、いつになるかは分からないけど」
「人に言えないような関係でも、いいんですね。
それでも私を受け入れてくれるんですね。
ん……嬉しい、です。ありがとうございます。
これからもずっと……末永くよろしくお願いします」
まるで新妻のような台詞を吐かれ、一瞬身体が固まる。
思い切り強く文香を抱いていることに今更気付く。
離れようとするも、彼女の身体はどこもかしこも柔らかくて、良い匂いがして、どうにも別れがたい。
下半身の血流が増してきた時にようやく決心が付いたが、それではもう遅すぎた。
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