2:名無しNIPPER[saga]
2015/06/13(土) 00:27:24.67 ID:FBhrMB0RO
「――オジさん、ヒマなの?」
3:名無しNIPPER[saga]
2015/06/13(土) 00:28:19.59 ID:FBhrMB0RO
渋谷は、眠らない街。いついかなる刻も、多種多様な人々と明かりで溢れ返っている。
「そっちじゃないよ。こっち」
どうやら見当外れの方を向いていたらしい。再び女性の声がした。
4:名無しNIPPER[saga]
2015/06/13(土) 00:29:08.96 ID:FBhrMB0RO
長身痩躯で、整った面立ちの少女。
しかしその目つきはやや棘があり、ぷくりとした下唇はへの字だ。
白いブラウスに黒いカーデガン、胸元には着崩した緑のネクタイ。
5:名無しNIPPER[saga]
2015/06/13(土) 00:30:04.38 ID:FBhrMB0RO
僕はと云えば、新年度早々に大ポカをやらかして、自らの不器用さに辟易としていたところで。
会社の残業帰りに、ハチ公前広場から僅かばかり顔を覘かせる空と星を眺めていただけだ。
「ふぅん、やっぱりヒマなんだね、オジさんは」
6:名無しNIPPER[saga]
2015/06/13(土) 00:31:11.99 ID:FBhrMB0RO
「そんなことよりさ、ヒマなら、“コレ”で今夜私と遊ばない?」
妙に受け答えの手慣れた少女は、「コレ」と云いながら、小指と薬指だけを折った右掌を、僕に向けてきた。
相変わらずのへの字口、しかしその奥にはやや笑みを含んでいるとも受け取れる表情で。
7:名無しNIPPER[saga]
2015/06/13(土) 00:31:54.68 ID:FBhrMB0RO
つまり、三万円で、円光―か―ってということ。
「どう?」
彼女がひらひらと揺らす右手を視界に入れたまま、僕は固まった。
8:名無しNIPPER[saga]
2015/06/13(土) 00:32:45.27 ID:FBhrMB0RO
一体全体、どうして円光なんか?
内心の狼狽を隠してそう問うと、
「だって、つまらないから」
9:名無しNIPPER[saga]
2015/06/13(土) 00:33:58.30 ID:FBhrMB0RO
「つまらない、って云うのは、充分な理由じゃない?」
まるで、それが然も当たり前であるかのように。
「おにいさんもつまらなそうにしてたからさ、似た者同士だと思って」
10:名無しNIPPER[saga]
2015/06/13(土) 00:34:41.31 ID:FBhrMB0RO
「もう、じれったいな。いいんでしょ? はい、じゃあ、行こ」
どう対応したものか考えあぐねているうち、彼女は半ば強制的に腕を絡ませて僕を引っ張った。
思いの外、華奢な腕が生み出す強い力で、少しよろめいた。
11:名無しNIPPER[saga]
2015/06/13(土) 00:35:40.62 ID:FBhrMB0RO
「改札の方は見ないで。交番があるでしょ。サツに絡まれると面倒くさいから、堂々としてて」
万一の時は、さしあたり、私は妹ってことにしてね――と、前を向いたまま付け加える。
オジさん、と僕を呼んだわりには、兄という設定なのか。
12: ◆SHIBURINzgLf[sage !蒼_res]
2015/06/13(土) 00:37:30.35 ID:FBhrMB0RO
ひとまず短いですがここまで。
空いた時間にぼちぼち更新していきます。
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