72: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/19(金) 23:27:23.24 ID:S9oem3+wO
その光景を目にした途端、先日の帰り際の記憶がどうしても甦ってきてしまった。
結局、僕の渡した四万円はどさくさにまぎれて受け取らず、別のオヤジとホテルへ入っていったこの少女。
なんでわざわざ僕に金を突き返して、あんなハゲデブと寝ることを選んだのだろうか。
73: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/19(金) 23:28:25.68 ID:S9oem3+wO
「それに、眠いしさっさと寝たかったんだよ。家に帰るのは億劫だし」
異性との交わりなんて、睡眠とは対極にあるはずではないのか。
「あんな泥酔したオジさんはね、手コキなんかでいいから、一発抜いちゃえば大抵大人しく寝ちゃうんだよ」
74: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/19(金) 23:29:03.49 ID:S9oem3+wO
「私はそれからお風呂に入ってさっと寝て、朝早めに自分だけ抜け出したから、あの日はラクなもんだったな」
今夜はどうなるかわからないけどね? と、僕を試すような言葉をご丁寧にも添えてくれる。
僕のスルー力が問われている。
75: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/19(金) 23:29:45.13 ID:S9oem3+wO
「あれ以来やってない。今日は久しぶりにオジさんと遊ぼうと思ったタイミングでこんな天気、やれやれだよ」
到着し、傘を畳む僕より一足早くエントランスにとん、と入った彼女がこちらを向く。
「心配、してくれたんだ?」
76: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/19(金) 23:30:32.10 ID:S9oem3+wO
それなりに人気のホテルなのだろうか、九割ほどが既に埋まっている。
つまり、凡そ二十組もの人間達が、既に今この瞬間も逢瀬を営んでいる。
この建物の中に、数多くの、濡れる並行世界があるのだ。
77: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/19(金) 23:31:04.18 ID:S9oem3+wO
最安値でもなく最高値でもないグレードを選んで、橙色に灯っているボタンを押す。
ランプが消えた瞬間、僕たち二人は不夜城の一夜限りの住人となった。なってしまった。
受付で鍵を受け取ると、少女はすでにエレベータを呼んで待っていた。
78: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/19(金) 23:32:23.75 ID:S9oem3+wO
五階の部屋へ入ると、当然ながら目の前にキングサイズのベッドが鎮座していた。
室内は広めだというのに只中へ配置されたそれは、つまりここがメインセクションなのだと派手に主張する。
79: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/19(金) 23:33:05.31 ID:S9oem3+wO
一種の気配り上手と云えば聞こえはいいだろうが……
先程のエレベータといい、その実、まさしく男とこのような場所へ来るのに手慣れている動きということだ。
「ん。ありがと」
80: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/19(金) 23:33:55.33 ID:S9oem3+wO
次は風呂だ。
あれだけ濡れて冷えたのだから、シャワーではなくて浴槽に湯を湛えた方がいいだろう。
ガラス張りの、部屋から丸見えの風呂場へ入り、蛇口を最大まで開ける。
81: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/19(金) 23:34:57.45 ID:S9oem3+wO
「バスミルク入れて泡風呂にしないの?」
背後から抑揚を抑えたトーンで訊かれた。
まったく、ラブホじゃないんだからそんなことする必要ないだろう。
82: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/19(金) 23:35:33.80 ID:S9oem3+wO
そこには少女が生まれたままの姿で立っていて、僕は心臓が飛び出る思いをした。
上から下まで一糸纏わず曝け出された、赤味が少しだけ強い肌。
細身であるにも拘わらず、くびれのはっきりした腰。長くしなやかな脚。
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