247:名無しNIPPER[saga]
2015/06/30(火) 22:12:34.41 ID:oqH+Nm+DO
「お上手なんですね」
「分かるかい?」
「はい。音で大体のことは分かります」
ライは自身が折った鶴を見た。割と難易度の高い物のはずだが、いとも容易く作れてしまった。記憶を失う前は頻繁に作っていたのかもしれない。
「良かったら、どんどん折って下さい」
「じゃあ……お言葉に甘えて」
同じ色の紙を数枚選び、また折っていく。今度は何かを作ろうという明確な目的は無い。体が覚えている動作をそのまま紙に投影した。
「…………」
出来たのは、何かの花弁を模した物。数枚の紙を組み合わせて作った一品だった。ナナリーに差し出すと、彼女はそれの縁をなぞりながら首を傾げた。
「これはなんという作品ですか? 花のようですけど……」
「なんだろうな。僕にもよく分からないんだが」
昨日の図書室で読んだ本にあった植物に似ている。そう、あれは確か……。
「桜……だと思う。たぶん」
どうにも歯切れの悪い返しだった。しかし確信はなかったが、その単語がしっくりきた。
「桜、ですか」
ナナリーにとっても何か思い入れがあるのかもしれない。彼女は桜(のような物)を大事そうに愛でている。
「…………」
こうしていると、どうしようもなく懐かしい気持ちになる。記憶があった頃は、年下の少女と二人、穏やかな時間を過ごすのを楽しみにしていたのだろうか。
1002Res/860.00 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。