874: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/15(日) 23:52:29.93 ID:dxIhcDNDO
「大丈夫?」
汚れた服の事など気にもとめず、カレンはしゃがみ込んで男の子に手を差し伸べた。メッシュ素材に似た手触りのスカートは汚れに強いし、使えなくなったところで買い替えれば事足りる。
「あ、あの……」
男の子は怯えた表情でカレンの手を見つめている。まるで凶器を向けられた時のような、恐怖と不安に満ちた目。
どうしてそんな顔をされるのか分からずにいると、屋台の近くにいた女性が弾かれたように飛び出してきて、少年をカレンから守るように抱き寄せた。
「申し訳ありません! クリーニング代はお出ししますから、どうかお許し下さい!」
「え……」
状況が飲み込めず、カレンは唖然とした。
すぐに思い至った。そうだ。ブリタニア人は散々、ここの日本人達に対して嫌がらせ目的の暴行を働いている。天上人の衣服を汚した我が子がどんな扱いを受けるか、この母親は怖いくらい良く知っているに違いない。
この人達から見たら、カレンは生粋のブリタニア人に見えるのだ。こちらは敵意なんて無いのに。
身を挺して必死に我が子を"外敵"から守ろうとする母の姿。その"外敵"が他ならぬ自分だという事実。そしてその誤解を解く方法が見つからない絶望感。
母。
子供。
お母さん。
違う。敵じゃない。私はブリタニア人なんかじゃない。
「あ、あの、私は……」
「申し訳ありません! 申し訳ありません!」
言葉を尽くしたところで理解を得られるわけでもない。
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