過去ログ - みく「死の港町にて」【モバマス×メタルマックス3】
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6: ◆Freege5emM[saga]
2015/06/14(日) 22:20:11.71 ID:RtIBe/voo

●04

「親方は理不尽にゃ。レンタルタンク屋とか、ハンターオフィスとか、
 この街の外まで後ろ盾がある連中は別として、ほかの店の連中はどうにゃ。
 よそからやってきたクランにペコペコして、何とか商売やってる有様にゃ」

みくは毛玉のように声を吐き捨てた。

クラン――冷血党――は、この大陸に勢力を拡大しつつある武装集団である。
都市の一部を占拠して、その住民からみかじめ料を吸い上げる。
そのみかじめ料は、生体兵器の開発に使われているなどと囁かれているが、定かではない。

“大破壊”後に国家が崩壊したこの世界において、
プエルト・モリなどいくつかの都市は、クランの暴力に屈している状態だった。



「まぁ仕方ないじゃないか。この街のクラン連中は脳無しの乱暴者だが、それでもカネは落とすんだ」
「だから、にゃ。クランとの交渉が親方連中に許されて、みくに許されない道理は無いにゃ」

晶葉は、みくの手から飲みかけのハッピードリンクをスリ取ると、
残っていた中身を一息に飲み干してしまった。

「ナニするにゃ!」
「いいだろ、もとは私がくれてやったモノだ。
 キミは自分のモノでないモノまで、自分のモノと思い込むクセがあるな。
 だから泥棒猫呼ばわりされるんだ……」

みくは、一瞬ネコババした銃へ手を伸ばしそうになった。



「まぁ、みくがコソコソとブツを捌いてる相手は、クランと言っても末端だろ?
 それは私も感心しない。三下にオモチャ売って小遣い稼ぎとか、同じメカニックとして情けないぞ」

みくは『オモチャかどうか試してみるか、にゃ』と懐の銃を見せる欲求を押さえ込んだ。

晶葉のように、若くして一人前以上にクルマをいじれる腕前のメカニックであれば、
スリ取ったピストルやベースボールカードをユッキたちへ流す気はないのだ。



「みくは、カネが少しでも多く欲しいだけにゃ」
「そりゃ私も欲しいがね。みくは欲しいものでもあるのか? 私はクルマとパーツが欲しいな」

みくは言葉に詰まった。
何とかして、晶葉より格好良く響く動機を聞かせたかった。

「自由が、欲しいにゃ。稼ぎさえあれば、あの親方の言いなりになんかならないにゃ」
「はぁ、そうかい」



みくと晶葉の親方は、“大破壊”後の世界としてはかなり人道的であった。
身寄りの無い二人を引取り、タダ働きさせているが、
代わりに衣食住を与え、メカニックとしての技術も教えている。
腕前とお人好しさからくる人望で、プエルト・モリの住民の中でも名が通っている男だ。

それでもみくは、親方を悪しざまに言う。

みくは猫に憧れていた。
みくの目には、路上に打ち捨てられた生ゴミを漁る薄汚い野良猫でさえ、
他者からの支配を傲然と拒絶する腕っこきのように見えていた。



「そろそろ我らが親方が戻ってくる頃かな。
 メンテ後のテスト運転がてら、MBT77出して迎えに行ってやろう」
「じゃあ、みくは留守番してるにゃ」
「いいや、私について来いって。私からも言ってやるよ。
 もう妙なウワサのある地下道へ、みくを行かせたりしないでって」



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