32: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/15(月) 23:31:49.19 ID:7IXBXgnJ0
 色ならばこうしたイベントを見逃さず、迷うことなく葉山にアピールをするものだと思っていた。 
 一色の行動原理の中心には「可愛くありたい」というものがある。 
  
 そして、その矛先は主に葉山に向けられているはずだった。 
 信号が青に変わり、再び走り出す。 
  
  
 彼女の見せた反応が意外で、さてどうしたものかと考えつつ自転車を走らせていると一色が言葉を続けた。 
  
 「何というか……怖いんですかね」 
  
 「怖い?」 
  
 ホワット?どういうことだ? 
 平素の声音とは違う、落ち着いた声で過去を振り返るような調子で語り始めた。 
  
 「一回振られてしまって、それは勝利のための布石だって言いましたよね?これからも諦めないって。 
 でも、やっぱり強がってたんですよね。振られてしまったことが、想いを拒絶されるってことが時間が経つにつれて怖いこと 
 何だってわかってしまいました」 
  
 「ああ……」 
  
 夜の街を坦々と走り抜けていく。その想いが聞きたくて、無言のまま言葉の続きを促した。 
 一色はすう、と一息ついてから再び話し出した。 
  
 「それから学校で会っても、部活で話していても、葉山先輩との間にどこか……壁のようなものを感じるようになってしまって。 
 葉山先輩は変わらず接してくれているはずなのに、違うんです。以前とは何かが違うんです」 
  
 「だから……怖いんです。バレンタインでチョコを渡そうとして拒否されてしまったら…… 
 そうしたら、葉山先輩が今よりもっと遠くに離れていってしまうんじゃないかと考えてしまって。それが、怖いんです」 
  
 一色は震えるような声で、絞り出すように心中を吐露した。 
  
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