78: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 00:43:30.03 ID:bJtf1eDj0
保健室内は静謐な空気が流れていた。
時たまエアコンが暖かい空気を流す、僅かな駆動音が聞こえるだけだ。
由比ヶ浜からチョコを受け取った後お互いどうにも余所余所しくなってしまい、現在は一人待ちぼうけだ。
飲み物を買ってくると先ほど出て行ってから、まだ帰ってくる気配はない。
今しかないか。
「雪ノ下、もう起きてるだろ」
カーテンの内部で、ごそと人が動く気配があった。
先ほどまで聞こえていた浅い呼吸はもう聞こえない。
反応を窺っていると、カーテンを通してくぐもった声が響いた。
「……ええ」
やはり起きていたか。予想通りといえばそうだ。
少し鼻にかかるような声での返答で、彼女が風邪をひいていること再確認させられる。しかしカーテン挟んで会話するのも妙な感じだ。
向こうが透けて見えそうなカーテンなのに、静けさと部屋の暗さも相まってやけに重苦しく感じてしまう。
「いつ頃から起きてたんだ?」
「由比ヶ浜さんがあなたに何かを渡す前、くらいかしら」
嘘は言っていないだろう。ちょうどあの時くらいから寝息が聞こえなくなっていたと思うから、辻褄は合う。
それに、こんなことで嘘を吐くメリットはない。
「起こして悪かったな。うるさかったか?」
「そうでもないわ。少し微睡んでいたらあなた達の声が聞こえて、それで起きたの」
「そうか。体調は?」
「今は熱も下がってきたみたい。少し楽になったわ」
「なら良かった」
そこで会話が一旦途切れた。
ただでさえ会話は苦手なのに、カーテン越しで表情が見えないというのはここまで話しづらいものなのか。
目は口ほどにものを言うというが、視覚的な情報も会話には重要な要因となるらしい。
何かを思い出したのか、ふいに雪ノ下が口を開く。
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