85: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 01:12:46.54 ID:bJtf1eDj0
そう言って由比ヶ浜は雪ノ下にどんどん顔を近づけていく。
垂れた髪をすっと片手で耳に掛けてそれはまるで接吻でもするかのようなうっとりとした表情だ。
なっ!何をするだァーーーーッ。ガチゆりか?ガチゆりなのか?
実際キスなんてするわけもなく、雪ノ下の耳元でこそこそと話しを始めた。
両手で声が漏れぬよう耳をしっかり覆っている。
聞かれたら困る話なのだろうか?ならば口をはさむ様な無粋な真似はしない。
そう思って雪ノ下を見ていると、由比ヶ浜が何かを伝えた瞬間僅かに目を見開いた。
次には遅れたように、顔に紅が差す。
由比ヶ浜と目を合わせると、こくりと頷いた。
それを見た由比ヶ浜は満足げに顔を離すと、両手を後ろに組んで満面の微笑みを向ける。
「良かったねゆきのん。本当に良かった……」
「……あなたには敵わないわ」
顔を見合わせると楽しそうにくすくすと笑い合う。
何なんだ一体……。そう呟いて両者を交互に見ていると、声が重なった。
「ヒッキーは気にしないの!」
「比企谷くんは気にしないで」
女の子同士の秘密の話に口をはさむのは確かに無粋な行為だ。
でも気になるものは気になる。
しかし、それに踏みこむには勇気が足りない。ただ勇気ばかりあって考えなしに踏みこむのも駄目だ。
踏み込み過ぎればただのウザいやつになってしまう。
要はバランスだ。空気を読むとも言っていい。
今回はそうだな、空気を読むとしようか。
「……おお」
日はすっかり暮れ、夜が近づいてくる。窓の外を見やれば、落ち葉がからからと地面の上をスライドしていくのがわかった。
どこかの隙間からかヒューヒューと風が漏れるように吹き込む音もする。今日も夜にかけて風が強くなってきた。
そんな冬らしい景気を目にしていても、不思議とここは暖かい。
暖房のお蔭だけではないと、はっきりとそう感じた。
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