10:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:00:01.99 ID:MUuaVWOfO
 その過程で、他の病院や病室の、どうやら“視える”らしい一部の人には驚かれてしまった。 
  
 そりゃーさすがに、壁からいきなりにょきっと出て来たユーレイに視線を向けられ、 
  
 「この部屋も違う。はい、次」 
11:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:01:08.06 ID:MUuaVWOfO
  
 アタシの“本体”が寝ているICUは、隔離された大きな部屋。 
  
 何人もの患者がずらりと寝かせられていて、その誰もがぴくりとも動かない。 
  
12:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:01:43.66 ID:MUuaVWOfO
 頭に白い布が被さっていないということは、命は保ったようだ。よかったよかった。 
  
 じゃあアタシは幽霊じゃなくて幽体離脱ってことかな? 
  
 うーん、めんどくさいから『ユーレイ』でいいや。 
13:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:02:57.91 ID:MUuaVWOfO
 ただ、その頭部は、包帯でぐるぐる巻きになっている。 
  
 近づいて、まじまじと眺めてみた。 
  
 かなり幅広の包帯だ。救急箱に入っているものとはまるでレベルが違う。 
14:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:03:45.95 ID:MUuaVWOfO
  
 そうやってアタシが“自分観察”をしているうちに、ドアの向こうから話し声が聞こえてきた。 
  
 アタシに割り当てられたベッドは、ICUから外へとつながる出口に一番近い場所。 
  
15:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:04:43.09 ID:MUuaVWOfO
 思考を諦めて会話に耳を傾けると、お医者さんからアタシの容態の説明がされているところだった。 
  
 髪の一部が剃られて、おでこの生え際から後頭部まで、ものすごく大きなメスと縫合の痕があるそうだ。 
  
 なんでも、頭蓋骨を切って取り外す開頭手術をやったらしい。 
16:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:05:14.30 ID:MUuaVWOfO
 アイドルとして顔面が無事だったのはよかったけど…… 
  
 髪が一部とはいえ剃られちゃったら、しばらくはテレビとか雑誌とかには出られないよねぇ。 
  
 まあ、或る程度伸びればエクステで誤摩化せるし、手術痕は髪に隠れるだろうから大丈夫かな、たぶん。 
17:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:06:07.18 ID:MUuaVWOfO
  
 「治る見込みは……どうなんでしょう」 
  
 男の人が憔悴しきった顔でお医者さんに訊いている。 
  
18:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:06:56.85 ID:MUuaVWOfO
 「――原因不明の重度昏睡状態にあります。外部からの刺激に、脊髄反射以外の反応を見せません。 
  それ以外の体機能はすこぶる健康なものの……この状態が続くと、遷延性意識障害となるでしょう」 
  
 「そ、それはつまり……」 
  
19:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:07:32.45 ID:MUuaVWOfO
 アタシといえば――未だにあまり実感が湧かない。 
  
 もちろん、ショックはショックだけど、アタシは実際ここにいるんだもん。 
  
 他の人に認識してもらえるかどうかはともかくとして、自我はきちんとここに在る。 
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