過去ログ - 八幡「真のぼっち」
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8:名無しNIPPER[saga]
2015/06/21(日) 13:35:07.95 ID:KKdbAala0
「ふ、そうだろう。まだまだ私は若手だからな。しかし、そうだな高校教師としてのそれで不足なら私の人生全てで見ても君のような奴はレアだと言わせて貰おう」

 何故か先生は一瞬嬉しそうな顔を浮かべ、念を押してきた。若いと言われたのがそんなに嬉しいのだろうか。それはまあいい。この程度で納得する俺ではない。

「それは先生が見た目にかなり美人だからです。いいですか? 美男美女の周りには往々にして人が集まりますが、俺のような人種は賑やかな場所は苦手ですから自然とそういう人や場所から距離を取ります。おまけに賑やかな場所からちょっと離れたそれなりに活気ある場所も嫌いで、教室の隅っこで細々と地味に穏やかな生活を送るものですから、自然人を集める先生の様なタイプの人とは知り合いにならないものです」

 なんだ、この先生俺が話している間にどんどん相好が崩れていく。最初の美人の下りなんかいきなり口が緩んだぞ。教職は大変だと聞くが、ストレスとはこんな風に人を変えてしまうのだろうか。それともなんだろうこの程度の褒め言葉ですら掛けて貰えない職場なのだろうか。それほどまでに潤いの無い職場に務める先生に頭が下がる思いを抱く俺。先生が小さくガッツポーズまで取り出して人生の悲哀を感じてしまいそうだ。

「俺が何を言いたいかというと、先生の様な若くて美人な先生には俺のようなタイプは珍しく感じられるかもしれませんが、実際世の中には俺のような人種がそこそこ居るという事なんです。友達が居ないのも今の世でいう個性であって特別問題視されるような事ではなく、先生の優しさや生徒に向けるその真剣さを俺に向けて頂いた事には感謝します。ですが、まあ俺の事はそのような物だと思って頂きたいという事です」

 ちなみにだが、俺には友達の居ない知り合いは居ないし、俺自身特殊な事情を除いて本当に友達が一人もいない人間というのはまともじゃないと思っている。まあ特殊な事情というのもかなりのケースで存在するだろうし、個別の事象においてそれぞれ判断していかなければならないだろう。だが一概には言えないというだけで大概の場合友人が一人も居ないという人にまともな人はいないだろう。

「そう持ち上げるな。まあ、お前の言うとおりお前の様な奴がそう珍しくないというのも否定は出来ん」

 そういう先生の顔には紛れも無い喜びの色が浮かんでいる。なんだろう、本当若い女性に若いというだけで喜んで貰えているとしたら悲しすぎて涙ちょちょぎれそう。そんな先生の語調は先ほどまでより緩いものになってきており、このまま行けば呼び出された俺に待ち受けていた運命を回避出来そうだと喜んだのも束の間。

「しかしだ、その調子では将来的に苦労するのは火を見るより明らかだ。友人を欲しがれとは言わんが、一人か二人位は居たほうが良いだろう」

 本当どこまで真面目でいい先生なんだこの人。学校を卒業すれば金輪際顔も合わせないだろう相手の将来まで心配してみせるとは。天晴じゃと平安貴族よろしく言いたい気分だが、俺にはその気遣いも不要だ。というか俺に友人が居ない前提で進むのはどうなんだ。

「先生、俺にだって友達位居ますよ」

「本当か? 教室で二言三言話す程度では認めんぞ」

「勿論ですよ。友達ったら友達です。ただこの高校には一人もいないだけで」

「中学校の友人という事か。信じ難いな最後に遊んだのはいつだ」

「最後に遊んだ日ですか? 去年の3月です」

 俺がそういうと先生は煙草を灰皿に乱暴に押し付け火を掻き消した。そして苛立ちを隠さない口調でこう言った。

「そんなもんは友人と呼ばん!」

 これに憤らない俺ではない。教師が相手であっても時に自らの意志を貫く事、意見を主張する事は必要である。俺は語気を荒げた先生の目を真っ直ぐに見つめ、そして怒りを湛えたその瞳があまりに怖かったので僅かに逸らしてから抗弁した。

「先生がなんと言おうと友人は友人です。俺にとってはそれで友人なんです。世間にはペットを指して家族だと言って憚らない輩が居ますよね? それと同じです。俺にとっては彼らは友人なんです」



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