過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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350:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 22:43:15.18 ID:RYx/9kaJo
「い、いやいやっ、そんなのいいからっ。葉山くん、頭あげてよ」
「そうか。でも言い過ぎたのは俺が悪いよ。謝らせてほしい」
頭は上げたが、葉山はあくまで謝罪の低姿勢を崩さない。
351:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 22:44:34.52 ID:RYx/9kaJo
「そ、そう?ありがと、比企谷。葉山くんも、前のことならもう私大丈夫だから。気にしないで」
「そう言ってくれて助かるよ。ありがとう、折本さん」
「ううん。それじゃ私戻るね」
352:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 22:45:38.28 ID:RYx/9kaJo
折本は元気な言葉と中学生の頃にも見た懐かしい笑顔を残し、階段を一段飛ばしで駈け上がっていった。
見たことのある屈託のない笑顔は、昔も今も俺に向けられたものではないということに気がついて、少しだけ虚しくなった。
階段を見上げる葉山に声をかける。
353:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 22:46:35.83 ID:RYx/9kaJo
その通りだ。一度壊れたものはもう二度と戻らない。どんなに修復して綺麗に戻したと思っても必ず隙間は残り、一度入ってしまったヒビや傷がなかったことにはならない。
できるのはその傷から目を逸らすか、いかに目立たなくするか、そのどちらかしかない。新しく作り直さない限りは。
「あっそ。にしてもだ、お前が謝るだけなら俺はいらんだろ」
354:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 22:47:57.87 ID:RYx/9kaJo
俺がしてほしいとかしてほしくないとか、そんなのは俺のエゴでしかないと言われている。葉山に言われるのは癪だし悔しいが、その通りだと思った。
俺も小さい頃は友達だっていたし、殴り合いのようなものではないが喧嘩だってしたこともある。
だから、謝ることができないと前に進めないことがあるというのもわかる。
355:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 22:49:08.51 ID:RYx/9kaJo
葉山は先ほどのものとは違う楽しげな笑みを漏らす。なにこいつ。嫌なやつって言われて喜ぶとかマゾなの?
「だろうな。……戻るか」
「ああ」
356:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 22:50:09.04 ID:RYx/9kaJo
「ははっ、うまく言っといてくれよ」
葉山は一色の好意が自分に向いていることをわかっているようだ。そういや前も困ってるとか言ってたな。
あいつ人によって露骨に態度変えるし、困る気持ちはわからんでもない。あざといし。
357:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 22:51:05.29 ID:RYx/9kaJo
「葉山君。……比企谷君も。二人とも、ちょっといいかしら?」
雪ノ下は俺たちの元に歩み寄ると、控えめに口を開いた。
「由比ヶ浜さんと一色さんからはもう了承をもらっているのだけど……。向こうの生徒会の人たちが、親睦を深めるために一緒に食事でもどうかって」
358:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 22:52:36.82 ID:RYx/9kaJo
「俺は……行くかな。今日顔見せできなかったから丁度いい。比企谷はどうする?」
「……行かねーよ。金もねぇし。もう帰るわ」
「そうか。じゃあまたな」
359:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 22:53:21.20 ID:RYx/9kaJo
「いらん。行かねぇっつってるだろ」
雪ノ下がビクッと肩を震わせて怯えた表情を見せる。
やめてくれ、なんでそんな顔をするんだ。いつもみたいに俺に反論して俺から言葉を奪ってくれ。
360:名無しNIPPER[sage sage]
2015/07/30(木) 22:55:17.30 ID:RYx/9kaJo
別れの挨拶と一緒に雪ノ下は微笑みを向けてくれた。
その微笑みはとても優しいけど弱々しくて、俺の知っている雪ノ下のものとは違っているような気がした。
よく似てはいるが、別のものだ。
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