過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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741:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:20:18.41 ID:vhSqVbECo
「私がさっき言ったお願いは、叶えてもらえないのね……」
雪ノ下が少しだけ恨みが込もったような眼差しを向ける。
「……すまん、それはできない。俺は馬鹿だから、お前らに何を言われてもその裏を疑っちまうんだ。結局お前らのことを信頼してないのかもしれない。これは俺の本音だ。けど、こんなろくでもない奴なのに、そんなこと考えてるのに、それなのに……」
742:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:22:10.80 ID:vhSqVbECo
「そのためにはこのままじゃきっと駄目なんだ。見ない振りを続けてこのままでいられたら確かに楽しい。俺は今の居場所もこの関係も大好きで、失いたくない。けどそれでも、馬鹿みたいな理想を追いかけて全部を失うとしても、それでも……」
曖昧で自分でもよくわからないものを言葉にしてしまってもいいのかと躊躇いがあった。
でも今はそれしか出てこない。どうしても脳裏から離れない、平塚先生に言われた言葉。俺が昔から求めていた抽象的な言葉。
743:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:24:01.88 ID:vhSqVbECo
こんなねだるような戯言じゃなくて、もっとスマートに、理路整然と話せたらよかったのに。
でも、俺が考えてもがき苦しんで、足掻いて悩んだ結果だ。受け入れろ。
雪ノ下と由比ヶ浜は少し驚いた顔で、そんな妄言を吐く俺を見つめていた。
744:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:24:43.92 ID:vhSqVbECo
「行こうか」
「……はい」
葉山先輩の空気を吐くだけの声に促されて、生徒会室の扉を開けることなく静かにその場を離れた。
745:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:25:49.10 ID:vhSqVbECo
わたしがいくら叩いても全く響かず、びくともしない葉山先輩の作る壁は、少しでも揺れ動いたりしたんだろうか。
「少し話そうか。どこか別のところへ行こう」
葉山先輩は普段と変わらない調子でそう話し、わたしは大人しく頷く。
746:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:26:39.21 ID:vhSqVbECo
暖かそうな色の夕焼け空なのに、開けた瞬間に外の冷たい空気がわたしの足元に流れ込んだ。
「さむ……」
「ちょっとここで話そうか。ちょうどいいだろ?」
747:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:27:21.70 ID:vhSqVbECo
「ははっ。それがいろはの、素の顔?」
少しだけ驚いた。葉山先輩にバレてないとは思ってなかったけど、使い分けていることに言及してくれたのは初めてだったから。
「そう、なんでしょうか。よくわかりません」
748:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:28:28.64 ID:vhSqVbECo
話すときに意識して唇を尖らせた。ちょっとだけ怒ってるんですからね、という意思表示だ。
「わたしの気持ちはわたしが決めます。そんな、先輩には素を見せてるから好きだとか、惹かれてるとか、そんな単純じゃないです、わたし」
「……悪かった。俺が一方的に。醜いな、俺は」
749:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:29:13.04 ID:vhSqVbECo
これはただの、葉山先輩はわたしの憧れで、追いかけていたい存在であって欲しいと思う、わたしのワガママ。
「何をだ?」
「わたしだって傍にいたんですから。葉山先輩が誰にどんな感情があるかなんて、ちょっとはわかってます」
750:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:30:20.81 ID:vhSqVbECo
「そうかもな。たぶん、あれから初めて自分で選んだことだから、だろうね」
「よくわかりませんけど……。でも、そんなのは多かれ少なかれ、誰にだってあるものですよ。わたしなんか、先輩達みんなに嫉妬してます」
先輩たちはみんな凄くて、かっこよくて、眩しくて。わたしの憧れの人達。
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