過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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743:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:24:01.88 ID:vhSqVbECo
こんなねだるような戯言じゃなくて、もっとスマートに、理路整然と話せたらよかったのに。
でも、俺が考えてもがき苦しんで、足掻いて悩んだ結果だ。受け入れろ。
雪ノ下と由比ヶ浜は少し驚いた顔で、そんな妄言を吐く俺を見つめていた。
744:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:24:43.92 ID:vhSqVbECo
「行こうか」
「……はい」
葉山先輩の空気を吐くだけの声に促されて、生徒会室の扉を開けることなく静かにその場を離れた。
745:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:25:49.10 ID:vhSqVbECo
わたしがいくら叩いても全く響かず、びくともしない葉山先輩の作る壁は、少しでも揺れ動いたりしたんだろうか。
「少し話そうか。どこか別のところへ行こう」
葉山先輩は普段と変わらない調子でそう話し、わたしは大人しく頷く。
746:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:26:39.21 ID:vhSqVbECo
暖かそうな色の夕焼け空なのに、開けた瞬間に外の冷たい空気がわたしの足元に流れ込んだ。
「さむ……」
「ちょっとここで話そうか。ちょうどいいだろ?」
747:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:27:21.70 ID:vhSqVbECo
「ははっ。それがいろはの、素の顔?」
少しだけ驚いた。葉山先輩にバレてないとは思ってなかったけど、使い分けていることに言及してくれたのは初めてだったから。
「そう、なんでしょうか。よくわかりません」
748:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:28:28.64 ID:vhSqVbECo
話すときに意識して唇を尖らせた。ちょっとだけ怒ってるんですからね、という意思表示だ。
「わたしの気持ちはわたしが決めます。そんな、先輩には素を見せてるから好きだとか、惹かれてるとか、そんな単純じゃないです、わたし」
「……悪かった。俺が一方的に。醜いな、俺は」
749:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:29:13.04 ID:vhSqVbECo
これはただの、葉山先輩はわたしの憧れで、追いかけていたい存在であって欲しいと思う、わたしのワガママ。
「何をだ?」
「わたしだって傍にいたんですから。葉山先輩が誰にどんな感情があるかなんて、ちょっとはわかってます」
750:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:30:20.81 ID:vhSqVbECo
「そうかもな。たぶん、あれから初めて自分で選んだことだから、だろうね」
「よくわかりませんけど……。でも、そんなのは多かれ少なかれ、誰にだってあるものですよ。わたしなんか、先輩達みんなに嫉妬してます」
先輩たちはみんな凄くて、かっこよくて、眩しくて。わたしの憧れの人達。
751:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:32:18.31 ID:vhSqVbECo
「葉山先輩は、なんでみんなと、その……壁を作るんですか?もっと踏み込んでみようとか、思わないんですか?」
「……どうだろうな。俺は特定の誰かじゃなくて、常にみんなの葉山隼人であろうとしてる。いつからかそれしかできなくなってただけなんだけど、まだやめる気はない、かな」
そう話す葉山先輩の横顔は、とても寂しそうに見えた。何をなのかはわからないけど、諦めてしまった顔のように見えた。
752:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:34:32.64 ID:vhSqVbECo
「そんなの……寂しいです。わたしは、葉山先輩の……。葉山先輩と……」
「すまない。俺はそういうのは、まだ……」
葉山先輩は辛そうに顔を伏せながらわたしの言葉を遮ろうとした。
753:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:35:49.00 ID:vhSqVbECo
普段なら絶対に聞けない、絶対に答えてくれないことを聞くんだ。
「どうするのがいいのか、わたしもそういうのから逃げて生きてきたのでよくわかんないんですが、聞きたいことがあります。葉山先輩……好きな人、いますか?」
甘えた猫なで声じゃない。上目遣いもしない。わたしがわたしとして聞く、初めての本気の質問。
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