11:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2015/07/04(土) 14:28:18.63 ID:kHvSRcn3O
俺は、宇宙人に会ったのかもしれなかった。
何日かバイトを休んだ俺は、ふとそんなバカなことを思った。
食に興味のない俺は、彼女が作った料理の味すら思い出せない。
彼女がこの部屋にいたという痕跡はなにも残っていなかった。
五歳の頃に、彼女に会ったと言う記憶もあやふやだ。
きっと全て幻だったのだろう。
なのに、俺はずっと泣き続けた。
妹の骨を見た時ですら泣けなかったのに、俺はこんな下らないことで涙を流し続けた。
今、生きてるかどうかすら分からない。
泣いて泣いて泣きつかれた俺は、寝心地の悪い座布団で寝た。
ふと気がつくと、部屋の中は真っ暗で、俺は耐えられなくて電気をつけた。
照らされた部屋に、あの白い作業着は見当たらない。
俺にどうしろと言うのだろう。
俺はまた泣いた。
しかし、いつまでもバイトを休んでいる訳にはいかなかった。
数日後、俺はぼんやりしたままスーパーへ向かった。
「おはようございます」
いつも通りに笑う俺を、パートのおばちゃん達は驚いたような顔をして取り囲んだ。
「一体なにがあったの?こんなに何日も休むなんて」
「具合が悪いんなら、無理せず言ってね。
ちょっとぐらい休憩してても大丈夫よ」
なんで、こんなに優しい言葉をかけてくれるのだろう。
俺にはそんな価値はないのに。
気がつくと俺はまた泣いていた。
喋れないほど泣く俺を、仕事が始まってるのにパートの人たちは気にかけてくれた。
俺はやっと日常に戻ってきた気がして、しばらく泣き続けていた。
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