31:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:59:47.95 ID:d3Zd/SN00
でも。
周防桃子。
32:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:00:58.57 ID:d3Zd/SN00
でも、少なくとも『ここ』に来ているということはある程度の実力を持っているはずだ、と私は思っていた。だから、監督が『本当に欲しいと思っている絵』を形にするためならば、彼女の言う通りにした方がいいだろう、と。
何度かリテイクをしなければならないかもしれないが――あるいは、それこそが監督の忌避するところだったのかもしれないが――それでも、監督の言っていたものよりは良いものができる。私はそう思っていた。
だから、私は助けに入った。いくら正論でも彼女の言葉では届かない。何の実績もない子どもの言葉は届かない。でも、私の言葉なら届く。
33:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:01:59.63 ID:d3Zd/SN00
どうして、あの監督にあんなことを言えたのか。どうして、大人の人に自分の意見を言うことができたのか。
『子どもだから』という答えならばそれで納得できる。『この業界のことを知らなかったから』という答えならば。
でも、彼女の反応を見ている限りだと、そうではなかった。この業界のことをある程度理解したその上で、彼女はあんなことを言ったのだ。
それが、どれだけすごいことか。……少なくとも、私には、絶対にできないことだった。
34:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:02:33.26 ID:d3Zd/SN00
桃子「というか、それを言うなら泰葉さんの方がすごいでしょ。あんなことを言えるなんて……本当に、すごいよ」
違う。
私はあなたが言うほどすごくない。私には、あなたみたいなことはできない。
35:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:03:25.19 ID:d3Zd/SN00
桃子「もしかしたら降ろされていたかもしれないのに……それなのに、あんなことを言えるなんて。本当に、すごいよ。かっこよかった」
降ろされる可能性……それは、ほとんど考える必要がない。
なぜなら、監督はわかっている。いくら性格に難があるとは言っても、彼は『作品作り』に対しては真摯な人間だ。その時点で、彼は私を降ろすことができない。
36:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:04:15.32 ID:d3Zd/SN00
この業界で生き残るために必要なものは力だと教えてもらった。だから私は力を付けた。演技力を身に付けた。『演技』に必要なものを出来る限り身に付けた。どうすれば演技が上手くなるのか。そうすることで大人の期待に応えられると思った。大人の人たちの言う通りのことができるようになると思った。
結果として、私は子役としての地位を確立した。大人の人たちの言うことを聞いて、その通りにすることができるようになった。
私は大人の人の言うことを聞いただけだった。今、それができる力を付けたことすらも、大人の言うことを聞いた結果でしかない。自分の意志でしたことなんて、何も、ない。
37:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:04:59.94 ID:d3Zd/SN00
桃子「どうやったら、泰葉さんみたいになれるんですか?」
桃子ちゃんは私のことを憧れの目で見ていた。そんな目で見ないで。私は、あなたに憧れられるような立派な人間じゃない……。
泰葉「……力を付ければ、できるよ」
38:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:05:38.13 ID:d3Zd/SN00
――そう、それはまるで、自分には達成できなかった夢を子に押し付ける親のような行為だった。
押し付けられる側のことなんて考えていない、身勝手な言葉。
その言葉が相手にとってどれだけの意味を持つかわかっているはずだった私が言ってしまった、呪いの言葉だ。
39:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:06:17.70 ID:d3Zd/SN00
11
調べた結果、やはり桃子がああなったのは岡崎泰葉が原因らしいということがわかった。桃子と岡崎泰葉が話していたところを見たという話がいくつかあったのだ。
40:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:06:58.64 ID:d3Zd/SN00
12
モバP「周防桃子との仕事が決まった」
41:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 16:07:36.86 ID:d3Zd/SN00
泰葉(……違う)
Pさんの言っていたことは本当だろう。だが、そういう意味ではない。重要なことは、『これだけの早さで実行に移した』ということだ。これだけの早さで実行に移すことができたということ。もしも断られたら他の方法に、と言っている時点でその方法もあったということだ。他の方法も実行しようと思っていたということだ。
でも。
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