5: ◆8HmEy52dzA[sage saga]
2015/07/17(金) 21:29:01.76 ID:0XhJBn560
「……おい、何をしてるんだ、戦場ヶ原」
「…………」
目の前に上下左右に揺れる尻があった。
四つん這いになってベッドの下を探るのは、説明するまでもなく戦場ヶ原ひたぎさんである。
彼女は部屋に戻った僕に気付き佇まいを直すと、先程までの光景など何事もなかったかのように勉強の体制に入る。
「おかえりなさい。ご苦労様でした」
かつてチキンチキンと羽川に蔑視された僕であるが、ここまでされておいて黙っている程ではない。
恐らくは、というかほぼ確実にエロ本を探していたであろうことはわかる。
それを指摘して僕のエロス関連の台所事情を蒸し返すのも愚策だというのもわかる。
ここは華麗にスルーしておくのも一手だろう。
だが、相手が戦場ヶ原の場合、聞かないで放置しておく方が怖いのだ。
こういう事を放っておくと、後になって何倍にもなって返ってくるような女である。
「……質問に答えるんだ、戦場ヶ原」
「エロ本を、探していたのよ」
「…………」
正直な奴だった。
何でだよ、そんなもの探すな、とは言うまい。
戦場ヶ原に理由を問い質し咎めたところで口論で勝てる相手ではないことは予想済みだ。
だが残念だったな、戦場ヶ原!
お前の彼氏がそんな詰めの甘い男とお思いか!
「で……お目当てのものは見つかったのか?」
「そうね。でもおかしいのよ」
ベッドの下から数冊の本を引きずり出す戦場ヶ原。表紙に華やかな水着の女の子が載った雑誌だ。
ぱらぱらとめくりながら、戦場ヶ原が面白くなさそうに言う。
「あるにはあったのだけれど……水着のカタログのようで案外普通なのね」
「……そんなものだよ。僕の名前は阿良々木暦。どこにでもいる普通の男子高校生だ」
「そんな、神原のようなハイレベルな変態に慕われエロ帝王と崇められる特殊な性癖を持つ阿良々木くん秘蔵のエロ本がこんなグラドル雑誌だなんて考えにくいのだけれど」
「お前は僕を何だと思っているんだ!?」
神原のやつ、あることないこと戦場ヶ原に吹き込みやがったな!
しかし、戦場ヶ原も流石に鋭い。
そう、あのグラドル雑誌は言わばカモフラージュだ。
妹や神原という僕のエロ本を探すことに情熱を注ぐ外敵がいる僕の部屋において、危機管理は必要不可欠なのである。
そこでグラドル雑誌をわかりやすいベッドの下に置き「なんだ、この程度か。阿良々木暦も大した事ないな」と思わせることを目的としているのだ。
僕だけかも知れないが、個々の性癖というものはかなりの割合で隠さねばならない事項だと思う。
そんなものを外部に向けて大っぴらに公表する事になんのメリットもない。
それに戦場ヶ原が来るとわかっていてそんな簡単に見つかる場所に置くわけがないだろう、バカめ!
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