60:1[saga]
2015/08/06(木) 04:01:50.08 ID:DprYNBt5O
『こっちも色々調べてみたんだけどさ。なんか、人材発掘といえば、って人がいるっぽいよ』
健夜「…え?ちょ、ちょっと恒子ちゃん、それ詳しく」
61:1[saga]
2015/08/06(木) 04:02:32.23 ID:DprYNBt5O
トシ「どうも、はじめまして。熊倉トシです。お会いできて光栄です、小鍛治プロ」
熊倉女史の第一印象はやさしそうなおばあちゃん、だった。
アポを取った時の声からも滲み出ていたように感じたが、実際に対面してみると改めてそう思う。
62:1[saga]
2015/08/06(木) 04:03:48.52 ID:DprYNBt5O
健夜「あの…率直に言いますと、私いま、ある事情で有望な雀士の子を探しているんです。来年には高校生で、かつ女子であることが条件で。人材発掘といえば熊倉さんだと噂に聞いたもので、厚かましいお願いだと承知の上でご教示賜りたいと…」
トシ「ふむ…」
63:1[saga]
2015/08/06(木) 04:05:07.45 ID:DprYNBt5O
張りつめた空間を跨ぎ、見つめ合うふたりの雀士。
片や指導者になろうという者。方や指導者として名を馳せる者。
果たして、その睨み合いは数秒、数十秒と続き。
64:1[saga]
2015/08/06(木) 04:06:08.13 ID:DprYNBt5O
トシ「南浦聡を知ってるかい?」
健夜「シニアの南浦プロですか?知っていますが…強面ですよね」
65:1[saga]
2015/08/06(木) 04:06:59.94 ID:DprYNBt5O
トシ「南浦には孫がいるのを知ってるかい?」
健夜「いえ、初耳です」
66:1[saga]
2015/08/06(木) 04:07:45.62 ID:DprYNBt5O
再び長野へと舞い戻ってきた健夜はさっそく南浦氏のもとを訪ねていた。
今時和風な畳座敷にて、卓袱台を挟んだ向こうに胡坐をかく南浦聡。
その厳しい目つきと口角の下がりきった口許、総じて無愛想と取れる印象からトシとは正反対の人間であることが見て取れた。
67:1[saga]
2015/08/06(木) 04:08:29.07 ID:DprYNBt5O
聡「数絵をあなたに預けろと、そう仰るわけですな」
重々しく口を開けば、その言葉の端々にふざけるなとでも言わんばかりの威圧を感じる。
それは健夜の一方的な被害妄想じみた感想であったが、それも仕方ないほどに、その場の空気は重く沈み込んでいた。
68:1[saga]
2015/08/06(木) 04:09:03.59 ID:DprYNBt5O
「失礼」とだけ断り、煙草を咥えた聡は安っぽいガスライターを手に取った。
聡「…もしもあなたがそこらの馬の骨だったら、そう一蹴しているところです」
69:1[saga]
2015/08/06(木) 04:10:05.70 ID:DprYNBt5O
聡「改めて問わせていただきたい。数絵は私が手塩にかけ育んできた蕾だ。あれには私の麻雀を余さずすべて注ぎ込んできた。あなたに、それを託すだけの価値がおありか」
投げかけられた問いに、健夜の全身が硬直する。
70:1[saga]
2015/08/06(木) 04:11:22.20 ID:DprYNBt5O
健夜(それこそありえない…!)
高い壁がそびえているから、だから背を向け逃げ出すのか。それこそが何よりも無礼にあたるのではないだろうか?
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