32: ◆XtcNe7Sqt5l9[saga]
2015/08/03(月) 19:21:18.32 ID:RYHG2sjFo
更に数日が経った。その日は生憎の雨で、散歩にも行けやしない……正直、少し苛立っていた。
それは呪術師の家に留まり続ける自分への、葛藤だったのかもしれない。
呪術師「……ん、美味しくできた」
呪術師は珍しく、丸一日家で俺とのんびりしている。ギルドからの要請もないし、今日はダラダラ過ごしたいとの事。
呪術師「犬、今日はご馳走……ささ、早くこっちにおいで?」
にこり、と手招きをする彼女。この数日で、彼女の表情は柔らかく変化していったと思う。
初対面で感じた翳りは、幾分か……鳴りを潜めている様に思える。
犬勇者「わふわふ」(飯だ飯だ―っ!)
……良い匂いだった。どうやら今日は肉を砂糖やらなんやらで煮詰めたやつらしい。
卵に漬けると美味い……らしい。料理は得意じゃないし、よく知らないけど。
―――ドン、ドン、ドン
重く、鈍く。木の扉を叩く音がする。思わず、俺は身体を震わせてしまう。
犬勇者(……呪術師の家に、人がくるなんて珍しいな)
呪術師も俺同様に、不可思議に思いながらも、扉を開く。
扉の向こうに居たのは雨に打たれた模様の、しかめっ面の兵士……王都直属の使者だった。
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