101: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:09:05.55 ID:s8phhYh5O
なまじ、真っ黒いオジサンや、正体のよく判らないPを完全には信用していない凛にとって、
この見るからにまともではなさそうな空気は、尻込みをさせるに充分だった。
さて、どうしたものか。
102: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:11:01.62 ID:s8phhYh5O
――
「おぉ、良く来てくれたね」
103: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:11:31.81 ID:s8phhYh5O
「こないだ、Pって人から、今日ここへ来るように云われて……」
「……ああ! P君が云っていた、“日曜に来る子”とは君だったのか! なんと奇遇なことだろう!」
――まるで、オジサンは私が来ることを知らなかったみたい。
104: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:12:02.16 ID:s8phhYh5O
「でも、そのPさん、いないみたいだけど?」
「ああ、今日は彼は外回りをしているよ。原宿辺りに行ってるんじゃないかな」
社長が破顔して、「ささ、こっちへ坐って」とジェスチュアで促す。
105: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:12:32.21 ID:s8phhYh5O
だが否定しない辺り、ほぼ同じ気分なのであろう。
「もしかしたら、怖い人たちの事務所なのかも、と……」
「うん。そう思われても仕方ないよね」
106: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:13:00.41 ID:s8phhYh5O
茶を淹れて持って来た女性が、刺々しく諌める。
「だから最初は少し苦しくても、もっと綺麗な処にした方がいいって云ったじゃないですか!」
「いやーちひろ君、そうは云うが、やはり立ち上げたばかりは色々と入り用でねぇ〜!」
107: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:13:29.51 ID:s8phhYh5O
「そんなこと、中高生くらいの女の子に判るわけないでしょう……もう」
ちひろと呼ばれた、その綺麗な女性が若干の溜息を吐きながら、凛たちの前にお茶を置く。
「あ、ありがとう……ございます」
108: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:14:02.12 ID:s8phhYh5O
「そう、この事務所は立ち上げたばかりで、アイドルがまだ居ないんだ――」
社長が、ちひろの言葉に首肯を添え、
「――出来ることなら、君たちにアイドル第一号となって貰いたい」
109: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:14:36.15 ID:s8phhYh5O
「この業界で長年やってきた、とはこないだ話したね。こうやって自分の事務所を持つのは夢だったのだよ。
ゆくゆくは、765や961にも負けないレベルにまで育て上げたいと思っている」
765も961も、業界最大手クラスのアイドル事務所。
110: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:15:04.63 ID:s8phhYh5O
凛は、熱く語る社長を、賛否の入り交じった視線で見た。
――このオジサンは、本当に熱意と夢を持っているのかも知れないけど……
対して、社長は身振り手振りがどんどん大きくなる。
111: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:15:35.81 ID:s8phhYh5O
「……えっ、さっきあんなに怯えてたのに、そんな即答しちゃっていいの!?」
驚いた顔で隣を向くと、少女も凛の方を見て、「はい、やっぱり悪い人そうには見えません」と微笑んだ。
お人好しと云うか、世間知らずと云うべきか――
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