110: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:15:04.63 ID:s8phhYh5O
 凛は、熱く語る社長を、賛否の入り交じった視線で見た。 
  
 ――このオジサンは、本当に熱意と夢を持っているのかも知れないけど…… 
  
 対して、社長は身振り手振りがどんどん大きくなる。 
111: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:15:35.81 ID:s8phhYh5O
 「……えっ、さっきあんなに怯えてたのに、そんな即答しちゃっていいの!?」 
  
 驚いた顔で隣を向くと、少女も凛の方を見て、「はい、やっぱり悪い人そうには見えません」と微笑んだ。 
  
 お人好しと云うか、世間知らずと云うべきか―― 
112: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:16:02.25 ID:s8phhYh5O
 言葉の裏に秘められた、アイドルへの強い憧れを感じ取った凛は、どう受け取ればよいか迷った。 
  
 「自分もアイドルとして輝きたい」と同意する理想主義的な見方、 
 「夢想家だね」と冷ややかで現実主義的な見方、その両方が頭中に渦巻いているからだ。 
  
113: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:16:35.25 ID:s8phhYh5O
 「おっはようございま〜す! すいませーん総武線がちょっと遅れてて時間ギリギリになっちゃいました〜♪」 
  
 およそ申し訳ないとは思っていないであろう口調で、一人の女の子が入って来た。 
  
 外側に撥ねた短めの茶髪を揺らして、大股で向かってくるその子は、 
114: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:17:08.90 ID:s8phhYh5O
 それにつられ、凛の隣に坐る少女も、 
 「あ、そう云えば私たち自己紹介がまだでしたね」と、思い出したように手を叩く。 
  
 「私、島村卯月です。17歳になったばかり。宜しくお願いします!」 
  
115: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:17:58.14 ID:s8phhYh5O
 不意のあだ名に、卯月はやや驚く。 
  
 「えっ? し、しまむー?」 
  
 「そ! “しまむ”ら“う”づきだから、しまむー。どお〜?」 
116: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:18:32.03 ID:s8phhYh5O
 ぼーっと二人の様子を見ていた凛は、いきなり話を振られてまごついた。 
  
 切れ長でやや吊り目がちな双眸と、への字口のまま、思考をショートさせて数秒ほど固まる。 
  
 初対面の相手からすれば、凛は近寄り難い雰囲気であろうに、未央はそれを気にする様子が微塵もない。 
117: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:19:02.22 ID:s8phhYh5O
 ソファに腰掛けたまま、やや引き気味に口を開いた。 
  
 「え、あ……わ、私は……渋谷、凛。……15歳。でもまだアイドルになるって決めたわけじゃ――」 
  
 「ええ!? 15歳? 大人びてて綺麗だから歳上かと思ってました!」 
118: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:19:39.18 ID:s8phhYh5O
 「それじゃあしぶりんだね! 宜しく!」 
  
 未央が右手を差し出してきたので、反射的に立ち上がって、おずおずと握り返す。 
  
 そこへ卯月も加わって、三人で手を重ね合った。 
119: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:20:14.59 ID:s8phhYh5O
 「……ごめんなさい」 
  
 凛が声の主の方を向いて、やや目を伏せると、社長は笑って手を軽く振った。 
  
 「いやいや、何も謝ることは無い。こないだも云った通り、無理強いするつもりはないのだから」 
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