過去ログ - 渋谷凛「私は――負けたくない」
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153: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:10:01.98 ID:s8phhYh5O

先程と同じ応接エリアへ戻りソファへ着くと、ちひろが改めてお茶を淹れてくれた。

スタジオからの道中も、事務所に入っても、社長から凛に「どうだったかな」と催促してくることはなかった。

以下略



154: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:10:33.33 ID:s8phhYh5O
そこへ、ちひろが社長の隣、凛の正面に坐った。

「ふふ、どうだった?」

にこりと笑み、尋ねてきた。
以下略



155: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:11:06.90 ID:s8phhYh5O
「……なんて云うか、歌とか踊りとか固有のものじゃなく、漠然とした感覚だけど……“表現すること”、かな」

明るいメロディに合わせて楽しく、哀しいメロディに合わせて情緒豊かに――
そんな、場に応じた自らの表現の仕方に、様々な種類、表情があると云うこと。

以下略



156: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:11:35.18 ID:s8phhYh5O
ちひろは、その言葉に大きく頷く。

「そうね、わかるわ。私だって、同じようにスカウトされたらそう云う思考が一番に浮かぶと思うもの」

ちひろに大きく同意され、凛は少しだけホッと安堵の息を吐いた。
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157: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:12:09.39 ID:s8phhYh5O
凛自身、それには、すぐに見当がついた。

「理由……か。確かに、オジサンにも、そしてPって人にも、同じような理由を掲げられたよ」

「同じ理由?」
以下略



158: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:12:41.59 ID:s8phhYh5O
ちひろの好き勝手な云い種に、隣で書類の説明をしていた社長は思わず苦笑いを浮かべ、

「はっはっは、随分云ってくれるねぇ、ちひろ君」

と後頭部を掻きながら、新たな書類を取り出すためだろうか、自らの執務机へと歩いて行く。
以下略



159: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:13:08.17 ID:s8phhYh5O
どこかで見たような……

と、考える時間も必要ないくらい、答えはすぐに浮かんで来た。

何故なら、ついさっき手ほどきを受けた青木麗その人だったからだ。
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160: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:13:50.03 ID:s8phhYh5O
「ねぇ、オジサン、それって……」

凛は、無意識のうちに社長へ声を掛けていた。

ん? と、その呼び掛けに凛の方を向いた社長は、彼女の視線を追って再度自らの手許へ目を落とし、
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161: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:14:25.89 ID:s8phhYh5O
「察しの通り、彼女は私がかつてプロデュースしていたアイドルだよ。これはIUで優勝したときの記念写真だ」

「えぇっ!? さっきのレッスンの先生、IUで優勝してたんですか!?」

凛との会話を耳にした卯月がそう叫んで、すっ飛びそうな勢いで立ち上がり、写真を覗き込んだ。
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162: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:15:06.45 ID:s8phhYh5O
「IU優勝者に気付かないなんて……私どれだけ疎いんだろう……」

凛が頭を抱えてそう呟くと、対照的に社長はあっけらかんとして、手をひらひら振った。

「それは仕方ないよ。彼女が引退したのはもう八年も前になるからね、君は小学校に上がろうかって頃だろう?
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163: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:15:46.95 ID:s8phhYh5O
だが、アイドルとしてスカウトされたにも拘わらず、それに気付かなかったことに、ショックを隠せない。

それは同時に、「このオジサンって、アシスタントさんの云う通り本当に“出来る”人だったんだね……」と、
認識を改めるきっかけともなった。

以下略



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