19: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:17:11.48 ID:s8phhYh5O
どうやら、業界関係者のようではあるが……
養成所で修練していれば、そんな人物がやってくるのはままあること。
彼女は、その人物を意識しないように、ひとまず今は練習に集中するようにと、自ら云い聞かせた。
20: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:18:33.04 ID:s8phhYh5O
・・・・・・
年度が変わり、新しい一年が始まってから一箇月が過ぎた日曜の午後。
21: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:19:00.78 ID:s8phhYh5O
大型連休中だと云うのに、世間はそれを手放しで歓迎できていない。
つい先日発生した、未曾有の地震の所為だ。
22: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:19:31.70 ID:s8phhYh5O
帰宅後、母親が用意していたおやつへ目もくれず、玄関は姿見の前で、買ってきた春夏物の新作に身を包む。
ターミナル駅近くのブティックでこの服を試着したとき、友達が「とても似合ってるよ」と褒めてくれた。
23: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:20:02.93 ID:s8phhYh5O
だが来訪者は、呼び鈴を鳴らしてすぐに戸が開くとは思っていなかったのであろう。
そこには、心底驚きたじろいだ様子で、郵便配達の人が立っていた。
曰く、簡易書留で郵便物が届いたらしい。
24: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:20:32.07 ID:s8phhYh5O
彼女は普段から元気溌剌だった。
クラスでも随一のムードメーカーであり、笑わせ屋であり、輪の中心にいた。
25: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:21:01.52 ID:s8phhYh5O
正直、彼女自身は結果に全く期待していなかった。
何故なら、柄にもなくあまりに緊張し過ぎて、本番で色々とトチったからだ。
会場へ向かっている時は、まるで心臓が口から飛び出るのではないかと思うくらいどきどきしていたし、
26: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:21:31.62 ID:s8phhYh5O
震える手で封を切り、おそるおそる中身を出す。
そこには『技量ではなく内面を見て判断し、ティンときたから合格』と良く判らない理由が綴られており――
その挨拶状の下に、しっかり整えられた様々な書類が束になっている。
27: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:22:02.09 ID:s8phhYh5O
・・・・・・
年度が変わり、新しい一年が始まってから一箇月ほどが過ぎた平日の午後。
28: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:22:32.32 ID:s8phhYh5O
大型連休が明け、世間には閉塞した空気が漂っている。
少女は気怠そうに、茶色いレザーのスクールバッグを肩へ廻した。
29: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:23:02.34 ID:s8phhYh5O
地震で、人生の価値観に僅かな変動があったとはいえ、結局それも二箇月弱が経って薄れてきた。
……そもそも、災害に対する現実感がほとんど無い。
発生当時は中学卒業直前の自宅学習日だったが、家の周辺地域は地盤が極めて強固なので、さほど揺れなかった。
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