過去ログ - 渋谷凛「私は――負けたくない」
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30: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:23:33.48 ID:s8phhYh5O

この春から高校へ進学した彼女は、幾分か、変化への期待があった。

新しい自分への、渇望があった。

以下略



31: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:24:02.01 ID:s8phhYh5O

そんな変わらない鬱屈したループから抜け出したくて、藻掻いて、ピアスを空けてみた。

中学生とは違うのだ、と自らの身体に刻み付けたかった。

以下略



32: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:24:35.44 ID:s8phhYh5O

そのまま、ターミナルの駅ビルでアパレルや靴、アロマなどを、大して注目もせず視てぶらぶらしていると、ふと
一階から四階までぶち抜くエスカレーターから、妙な出で立ちをした、初老の男性が歩いてくるのを視認した。

その態―なり―を半ば不躾な視線で凝視する少女に、男性が気付く。
以下略



33: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:26:31.76 ID:s8phhYh5O


――

駅ビル二階の、明るく賑やかなカフェ。
以下略



34: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:27:02.06 ID:s8phhYh5O
彼女自身、同年代の他の娘よりはそれなりに可愛いと云う自覚を持っているので、警戒心は多少ある。

だが、このような場所で、店の売り物に変な薬を盛られることもないだろう。

そう判断し、ゆっくりと、しかし怠そうにフォークを構えて「頂きます」と一口食べた。
以下略



35: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:27:31.81 ID:s8phhYh5O
少女は即答せず、視線を少し逸らした。

長い時間、咀嚼したまま考え、無言の間が続く。

卓上にある少女のiPhoneへメールが着信し、バイブレータが天板と共振して存外大きな音を立てた。
以下略



36: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:29:02.15 ID:s8phhYh5O
きちんと答えてくれるとは期待していなかったのだろうか、男は少しだけ目を丸くする。

「渋谷凛ちゃんか。素敵な名だ」

凛は、嬉しくも何とも無いと云う表情で紅茶をもう一口呷った。
以下略



37: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:29:41.80 ID:s8phhYh5O
「そう。さっき君を見て、一目でティンときたんだ」

「……はぁ。そんなの手当たり次第に誰にでも云ってるんでしょ、色んな甘言を弄してさ」

この真っ黒いオジサンの言葉を鵜呑みにするのは早計だ。今一信用ならない上、判断する材料が乏し過ぎる。
以下略



38: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:30:08.43 ID:s8phhYh5O
凛が視線だけ挙げて相手の眼を見ると、その彼は柔らかな笑みを湛え、言葉を続ける。

「それに、自分で自分を不良と云う子ほど、根はそうじゃないものだよ」

「妙な断言をするね、オジサン」
以下略



39: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:30:41.70 ID:s8phhYh5O
しかし男はそれを気にしない。

「君の全身から、お花の香りがする。芳香剤ではない、青く潤う生花の薫りだ。多分、お家は花屋さんのはず。
 そして手先は若干水荒れを起こしているね。きっと、ご両親の手伝いを精力的にこなしているのだろう」

以下略



40: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:31:14.48 ID:s8phhYh5O
凛のその反応に、男は少しだけ口角を上げた。

「身なりも一見崩しているようで実は端正だ。ぴしっとした上着、緩められているが形は整っているネクタイ。
 よく磨かれ、潰されていない革靴。僅かな染み汚れも、そして擦れもないスクールバッグ。
 手入れされた長く美しい髪もそうだね」
以下略



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