過去ログ - 渋谷凛「私は――負けたくない」
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319: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:29:35.70 ID:s8phhYh5O
「さぁて間に合うかね……」

Pは事務所で半田ごてをいじりながら、独り言つ。

この日、社長はじめP以外の全員が諸々の用事で外出していた。つまり事務所にPが一人きりだ。
以下略



320: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:30:07.04 ID:s8phhYh5O
Pは半田ごてを使って、内部の電源基板からケミカルコンデンサを剥がしていた。

寿命を全うしたそれは、液漏れケミコン特有の化学臭をまき散らしている。お世辞にも良い匂いではない。

三つほど取り去ったとき、立て付けの悪いドアが、あまり精神衛生に宜しくない摩擦音を立てた。凛だ。
以下略



321: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:30:35.30 ID:s8phhYh5O
「おうお疲れ。これは音の機材だよ。秋葉原でジャンク品を安く調達してきて、直しているところだ」

新しいコンデンサを半田づけする目線を逸らさないまま、Pは答えた。

「音の機材? それで何をするの?」
以下略



322: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:31:08.36 ID:s8phhYh5O
Pは顔を挙げて「おいおいおい随分非道い云い種じゃないか」と口を尖らせた。

「ごめん、あまりにも予想外だったからさ」

「いいさ。ま、昔取った杵柄ってやつだよ。大学の頃にちょっとかじってた」
以下略



323: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:31:45.74 ID:s8phhYh5O
「ふうん……私の曲、か。楽しみに待ってていいのかな?」

凛が、作業中のPの顔を覘き込むように、机に顎を乗せて訊ねた。

「……あまり過度な期待はするなよ」
以下略



324: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:32:17.45 ID:s8phhYh5O
日々の内容に大した差異はないはずだが、明確な目的を認識するだけで気の持ちように変化が現れる証左だ。

Pは満足げに頷いて、修理を終えた機材に火を入れた。

買ってきた時点ではうんともすんとも云わなかったディスプレイが、明るく反応する。
以下略



325: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:33:02.55 ID:s8phhYh5O
鼻歌を奏でながら、一緒に入手した中古の鍵盤を接続して動作を確認していると、
事務用品の補充に外出していたちひろが戻った。

Pの予想よりも早い帰社だった。

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326: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:35:01.93 ID:s8phhYh5O

本日のレッスンスタジオまでの道のりは、あっという間だった。

つい先刻から、不思議なほど非常に身体が軽い。

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327: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:35:32.08 ID:s8phhYh5O
普段、凛だけでなく卯月や未央を鍛えてくれている明や慶に、よく似たその女性。

しかしトレーナー二人より年齢を重ねているように見え、何よりも纏うオーラが桁違いに強い。

非常に失礼なことながら、Pは彼女を顔をじっと凝視した。
以下略



328: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:36:02.34 ID:s8phhYh5O
青春時代の、異性の象徴。

同級生たちと、ときには熱く魅力を語り合い、ときには下世話な談笑の種として存在し続けた、トップアイドル。

社長がかつてプロデュースしていたその女性―ひと―が、今はレッスン教室を主宰しているとは聞いていたが。
以下略



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