427: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:57:28.57 ID:s8phhYh5O
勿論、凛は自分が卯月たちより勝っているとは露程も思っていない。
むしろ彼女らより明らかに劣っている。それは最初のレッスンの刻から判り切っていた話だ。
それでも、改めて第三者に落ちこぼれの烙印を押されると云うのは、軌道に乗り始めた凛には辛い現実だった。
428: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:58:00.41 ID:s8phhYh5O
――つまんにゃい。
たまらず眼を瞑る。
――つまんにゃい。
429: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:58:30.32 ID:s8phhYh5O
荒い呼吸に、歩みを一旦止める。
みくの声を掻き消してくれと云う思いが天に届いたか、飛行機の轟音が響き渡った。
ここは米軍基地の滑走路南端をかすめるように延びる道路。
430: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:59:33.57 ID:s8phhYh5O
見送ったのち、視線を下げると、ハナコが不思議そうに、飼い主の表情を窺っていた。
「……ごめんね、ハナコ」
凛は、自らを見上げる小さなヨークシャーテリアを抱き上げた。
431: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:00:00.69 ID:s8phhYh5O
このままでは、私は捨てられてしまうだろう。
以前の無味乾燥な日々に戻ってしまうだろう。
何もかもがつまらなく、そして何も変えられないと思っていた自分が、ようやく、楽しいと思えることに――
432: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:00:27.30 ID:s8phhYh5O
凛は胸の前で拳をぎゅっと握った。
このままこれまでと同じレッスンを続けても――
凛が腕を上げたところで、みくだって自主レッスンをこなして更に数歩先へ進むことだろう。
433: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:03:37.55 ID:s8phhYh5O
――
それからの凛は、だいぶ淀んだ。
434: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:04:28.34 ID:s8phhYh5O
それは一種の被害妄想に過ぎないのだが、凛自身にとっては深刻な問題である。
たとえ無理矢理に鼓舞しようとも、心の安寧を脅かす思考から離れることができない。
自らを磨く為でなく、ただ予定表に書かれているからレッスンをこなす。
435: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:04:58.96 ID:s8phhYh5O
再度ステージに立たせるべきか?
――トラウマが甦ったらどうする。
レッスンにとことん打ち込ませるべきか?
436: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:05:33.92 ID:s8phhYh5O
「休ませる、なのかなぁ……」
ここ最近のレッスン中に見せる凛の顔が、以前に比べて暗く疲れているように感じたから。
少し気分転換が必要だろうか。
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