439: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:07:40.12 ID:s8phhYh5O
「要らない、なんてそんなわけないだろ。上の空の状態でレッスンを何度やってもあまり吸収できないだろうし」
「上の空って何……私はきちんとレッスンしてるんだよ!?」
「それは充分判ってる。でもレッスンスタジオに“ただ居るだけ”じゃ仕方ないしな」
440: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:08:10.71 ID:s8phhYh5O
Pは、どうにも凛の様子がいつもよりおかしいことが気がかりだった。
意識して平静に諭す。
「違う違う。根を詰め過ぎだから、久しぶりに羽根を伸ばしたり、何か好きなことをやったりしてみろってだけ」
441: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:08:37.70 ID:s8phhYh5O
Pもそう云う過ごし方を念頭に、凛へ休息を薦めていた。
しかし、ここで一つミスを犯した。
これまで、凛の生活は空っぽに近かったのだ。
442: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:09:31.72 ID:s8phhYh5O
「だから結局、お荷物はしばらく大人しくしてろってことでしょ!?」
「おい、凛、俺はそんなこと云ってないだろ!」
不幸にも様々な要因が重なって気持ちを制御できなくなった凛に、とうとうPも声を大きくしてしまった。
443: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:10:01.32 ID:s8phhYh5O
たまの特訓指導以外は、いつも事務所で紙を眺めているだけ。――彼女はPの日常をそう認識していた。
知られなければ、存在しないと同義――
他ならぬP自身がそう云っていたのに。Pは自分で自分の足許を掬われた。
444: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:10:32.06 ID:s8phhYh5O
Pは事務椅子に体重を全て預け、右手で瞼を覆って呻く。
「どうしろと云うんだ……」
やや離れたところから、ちひろが心配そうに様子を窺っているが、気付く様子はない。
445: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:11:29.00 ID:s8phhYh5O
――
翌日。
446: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:12:01.45 ID:s8phhYh5O
Pのことは兎も角、慶たちに要らぬ心労を掛けてしまっているのは本意ではないし、サボりは完全に凛の責だ。
昨日すっぽかしたことを直接謝ろうと、飯田橋までやってきたのだ。
防音扉の固いノブを開け、「おはようございます」と述べる。
447: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:13:00.25 ID:s8phhYh5O
「二人とも、そんなに血相変えてどうしたの……?」
「昨日から全然電話がつながらないんだもん、何かあったのかって心配したんだよ〜〜」
卯月が凛の二の腕を掴んでぶんぶんと振った。
448: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:13:37.19 ID:s8phhYh5O
凛は卯月と未央に「ゴメン」と手刀を切ったのち、明と慶を向いて、頭を下げた。
「昨日は、すみませんでした」
「もしや事故にでも遭ったか、って心配したけど、何もなかったならよかったです」
449: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:14:13.25 ID:s8phhYh5O
「ふふ、驚いたか? 昨夜、慶から相談されてな。少し様子を見に来ていたわけだ」
今しがた卯月と未央のレッスンを隣から見ていたよ、と笑って。
「渋谷君なら、きっとスタジオには顔を出すだろう――とな。予想的中だ」
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