443: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:10:01.32 ID:s8phhYh5O
たまの特訓指導以外は、いつも事務所で紙を眺めているだけ。――彼女はPの日常をそう認識していた。
知られなければ、存在しないと同義――
他ならぬP自身がそう云っていたのに。Pは自分で自分の足許を掬われた。
444: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:10:32.06 ID:s8phhYh5O
Pは事務椅子に体重を全て預け、右手で瞼を覆って呻く。
「どうしろと云うんだ……」
やや離れたところから、ちひろが心配そうに様子を窺っているが、気付く様子はない。
445: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:11:29.00 ID:s8phhYh5O
――
翌日。
446: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:12:01.45 ID:s8phhYh5O
Pのことは兎も角、慶たちに要らぬ心労を掛けてしまっているのは本意ではないし、サボりは完全に凛の責だ。
昨日すっぽかしたことを直接謝ろうと、飯田橋までやってきたのだ。
防音扉の固いノブを開け、「おはようございます」と述べる。
447: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:13:00.25 ID:s8phhYh5O
「二人とも、そんなに血相変えてどうしたの……?」
「昨日から全然電話がつながらないんだもん、何かあったのかって心配したんだよ〜〜」
卯月が凛の二の腕を掴んでぶんぶんと振った。
448: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:13:37.19 ID:s8phhYh5O
凛は卯月と未央に「ゴメン」と手刀を切ったのち、明と慶を向いて、頭を下げた。
「昨日は、すみませんでした」
「もしや事故にでも遭ったか、って心配したけど、何もなかったならよかったです」
449: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:14:13.25 ID:s8phhYh5O
「ふふ、驚いたか? 昨夜、慶から相談されてな。少し様子を見に来ていたわけだ」
今しがた卯月と未央のレッスンを隣から見ていたよ、と笑って。
「渋谷君なら、きっとスタジオには顔を出すだろう――とな。予想的中だ」
450: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:14:40.15 ID:s8phhYh5O
「意見の相違なんてよくあるもんさ。それ自体は別に構わないが――レッスンの無断欠席は感心しないな」
急転、麗が重いオーラを発して戒めた。
凛は立ちすくみ、恐怖で全身に鳥肌が立つさまをはっきりと感じた。
451: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:15:21.19 ID:s8phhYh5O
それで充分と判断した麗は、再び笑った。
圧する空気は霧散し、心なしか部屋の電灯が明るくなったように思える。
「着替えてきます」
452: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 06:15:56.82 ID:s8phhYh5O
再びスタジオに、拍をカウントする明の声や、上履きと床の擦れるステップ音が響いた。
麗と凛は、しばらくその光景を眺め、やがて麗がおもむろに口を開く。
「妹たちから伝聞した限りでは、何やら色々とあったようだな」
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