531: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:35:02.91 ID:SScT0J3gO
「わかった。これ、借りていいんだよね?」
凛がパタンと閉じて表紙を掲げ、問うた。
「勿論だ。手前味噌だが、昔の俺が書きまくったメモのおかげで、より内容を理解しやすくなってると思うぞ」
532: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:36:15.63 ID:SScT0J3gO
――
凛の集中力は凄まじい。
533: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:37:02.13 ID:SScT0J3gO
明と慶が、驚きに満ち満ちた表情でレッスンをつけている。
ニュージェネレーション用に書き下ろした曲の三声ハーモニーが、
卯月、未央、凛、それぞれの三つの音で組み上げられ、混ざり、溶け合った。
534: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:38:09.59 ID:SScT0J3gO
「渋谷、凄いじゃないか。ここ一週間ほどで見違えたぞ」
聖が手許のバインダーに色々と書き込みながら相好を崩した。
明や慶と違ってやや厳しい彼女が、ここまで手放しで褒めるのは中々ないことだ。
535: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:38:23.65 ID:SScT0J3gO
「凛、ちょっと残ってくれ」
更衣室へと向かう背中に、Pが呼び掛けた。
「ん? どうしたの?」
536: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:39:32.25 ID:SScT0J3gO
「そう。技術的なことはトレーナーさんの指導があるから割愛するとして……俺からは感覚的な話をな」
凛に語りがてら、聖にスタジオをこのまま少し使ってよいか訊ねる。
「ん、ああ構わない、まだ時間的には大丈夫だ。そうか、姉から伝聞していたが、キミも指導するんだったな」
537: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:40:02.00 ID:SScT0J3gO
凛はきょとんとしながらも、スピーカーからの音に歌声を乗せる。
「はい、OK」
Pが間奏で一度再生を止めた。
538: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:40:51.46 ID:SScT0J3gO
「そ。トレーナーさんたちに教わっているのは、声を出す方法。俺のは、より綺麗に声を響かせるためのものさ」
と凛の前へ出て、「まず発声はな、ヨーヨーなんだ」と、腕を上下に動かした。
「ヨーヨー? ……ねえプロデューサー、ちょっと話が飛躍し過ぎてついていけない」
539: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:41:53.23 ID:SScT0J3gO
「延髄の辺りから、前方軽く上方へ放る意識を持って声を出してみ。顔の位置と向きはそのままで」
「首の後ろから斜め上に、を意識するんだね?」
「そう、そして単に放りっぱなしにするのではなく、ポーンと投げたら手綱をクイッと引き戻すんだ」
540: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:42:25.21 ID:SScT0J3gO
その瞬間、聖、明、慶の表情がピクリと動いた。そして勿論、凛も。
これまでとは違う、芯の通った音が始終安定して響いたのだ。
「ん、いい感じじゃないか。これが発声感覚だ。だいぶ変わったろ」
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