541: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:42:52.78 ID:SScT0J3gO
「反復練習すれば意識せず出せるようになるさ。次にメロディ感覚だが――」
Pが自らの鞄を漁って、白と黒の丸い石を取り出す。
「メロディラインってのはな、碁石なんだ」
542: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:43:40.13 ID:SScT0J3gO
「凛の歌い方ってさ、ラインが不必要に流れちゃってるんだよ。
良く云えば『スムーズなポルタメント』になるけど、実態は『メリハリなし』ってとこだ」
碁盤に碁石を置く動きを、Pが空中で行なう。その姿は些か滑稽だったが、Pは真剣そのものだ。
543: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:44:21.14 ID:SScT0J3gO
最初はやや暗中模索だったが、考え方を掴んだ瞬間があった。
その前後で明らかに声そのものとメロディの聞きやすさが変化したのだ。
「うわ……」
544: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:44:52.53 ID:SScT0J3gO
ヨーヨーと碁石――
一見、歌と何の関わりもなさそうな単語が、凛のボーカルを引き締めた結果に、一同が色めき立つ。
「なんでもっと早く教えてくれなかったの!?」
545: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:45:34.17 ID:SScT0J3gO
「それに……我流で身につけた感覚だからな、アドバイスすべきか否か、本当はさっきのさっきまで迷ってた」
頬を掻いて、ばつが悪そうに語る。
「でも、麗さんから、臆せず進むようこないだ諭されてさ。今がたぶん俺の出番なんだろうな、って腹を固めた」
546: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:46:02.50 ID:SScT0J3gO
「ねえプロデューサー、今日もう少し歌っていい? 喉を傷めない程度に抑えるから」
凛が、逸る気持ちを隠し切れない声音で、自ら居残りを願い出た。
おそらく、駄目だと云っても聞くまい。
547: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:47:01.75 ID:SScT0J3gO
――
ここはお台場、フジツボテレビの湾岸スタジオ。
548: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:47:32.31 ID:SScT0J3gO
なお、このフェスで最大のステージは、空調の整った建物内にある。
そちらには765プロや東豪寺プロなど、誰もが知っているアイドルしか出ていない。
各所へのアイドルの割り当ては準備委員会が決めるが、その内容は事前に知らされていたし、Pも異存はない。
549: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:48:02.05 ID:SScT0J3gO
「みーんにゃ〜〜! サマーライブフェスへようこそにゃ〜〜!」
少し離れた中規模ステージから、特徴的な喋り方で即座に判別できる、前川みくのMCが響いてきた。
――そう。これこそがPからの要求だった。
550: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:48:32.40 ID:SScT0J3gO
まもなく、我々が誇るアイドルユニット、ニュージェネレーションの初舞台。
あと五分で開演だ。
551: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 16:49:04.02 ID:SScT0J3gO
ニュージェネレーションはみな、興奮と緊張の混ざり合った、それでいて勇壮な笑みを浮かべている。
「プロデューサー、やってくれたね。みくにリベンジする機会をこういう形で用意してくれるなんて」
「さあて、なんのことやら?」
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