653: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:34:02.27 ID:3+pD+bLQo
残酷な判断だった。
芸能人となった凛はともかく、その友人たちはあくまで一般人なのに。
「どうしようもないのだよ。下手にこちらが行動してしまうと、動けば動くだけ不利になる」
654: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:34:31.98 ID:3+pD+bLQo
十数分が経ち、ようやくPがクールダウンしてから。
凛にも、発売後にいきなり知らせるよりは、事前に報告しておいた方がよいとの判断で連絡がいった。
655: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:35:02.19 ID:3+pD+bLQo
凛の疑問詞に、Pは真意を測りかねた。目線で続きを促す。
「……私だって、普通の人間だよ? ついこないだまで、ごく普通の女子高生だったんだよ?」
――数箇月前までの私が同じ状況になっても、きっと誰もレンズで狙ったりはしない。誰も騒ぎ立てはしない。
656: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:35:36.82 ID:3+pD+bLQo
Pは、やや思案して口をゆっくり開く。
「生物として、種として人間は全て同じかも知れないが、同質ではないんだな」
難解な言葉遊びのような、または誰もが当たり前と思っているような。
657: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:36:03.11 ID:3+pD+bLQo
一般人を炭とするならば、凛はダイヤモンド。
そのダイヤの原石を磨き上げ、世に送り出すのがPやトレーナー陣の役目なわけだ。
「だが……俺は、これは必ずしも正確な喩えではないと思ってる」
658: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:36:32.19 ID:3+pD+bLQo
「だから、正確性を期すならば、凛は『雑草繁る草地に、一株、すっと立ち生えた百合』なんだ」
花やつぼみをつけていない時期の百合は、人々にとって雑草と同じように映るだろうが、
ひとたび花を咲かせれば、その存在は、雑草から一気に可憐な美花として認識される。
659: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:37:17.74 ID:3+pD+bLQo
根本から異なる存在。
それが、凛だ。
それが、“渋谷凛の、普通の人々とは違う点”なのだ。
660: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:37:50.48 ID:3+pD+bLQo
「あーと、ここまで云っておいてナンだが、勘違いはしないようにな」
Pは手を軽く振って、凛に念を押した。
自分のことを、普遍的かつ不変の価値を持つ選ばれた民だ、と思ってはいけない。
661: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:38:19.96 ID:3+pD+bLQo
例えば――通常、水は安くダイヤは高い。水は低価値でダイヤは高価値だ。
だが、それが砂漠では、安いはずの水が高価値に、高いはずのダイヤは何の役にも立たない低価値な代物となる。
環境や条件が変われば、人や物の持つ価値なんてのは容易に揺れるのである。
662: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:38:54.70 ID:3+pD+bLQo
二日後。
きりきりと胃が痛むPに面倒なこと――しかし当然の事象――が降り掛かる。
663: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 20:39:23.72 ID:3+pD+bLQo
「この度はご迷惑、ご心配をお掛けしまして申し訳ございません」
入室一番、Pが担当教諭に頭を下げた。
「ちょっと困るんですよねぇ。CGプロさん、でしたっけ?
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