752: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:41:02.28 ID:3+pD+bLQo
 運も実力のうち。そう云って切り捨てるのは簡単だ。 
  
 だが――凛だって、他のCGプロアイドルだって、その立場になるかも知れなかった。 
  
 降り積もった些細な結びつきや偶然が、糸となって持続できたに過ぎない。 
753: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:41:31.95 ID:3+pD+bLQo
  
 フェス初日は、雲が広がって太陽のぎらつきが抑えられた代わりに、だいぶ湿度が高かった。 
  
 やはり、できることなら快晴の空の許で演りたいと思うのはわがままではあるまい。 
  
754: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:42:02.25 ID:3+pD+bLQo
 「うわ〜〜すごい人、人、人。熱気ムンムンだねっ」 
  
 未央が控室から外の様子を窺っている。 
  
 この日の出番は午後。 
755: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:42:31.76 ID:3+pD+bLQo
 「しまむー、大丈夫かな?」 
  
 「うーん、まだ本番まで一時間くらいあるけど、流石にそろそろ来てないとまずいかも」 
  
 「私たちができる準備はこっちで進めちゃえばいいけど、しまむーのメイクとかは私は代われないもんね〜〜」 
756: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:43:01.92 ID:3+pD+bLQo
 じきに、卯月が大慌てで楽屋へ入ってきた。 
  
 「遅くなっちゃってごめんなさ〜〜い!」 
  
 肩で息をしながら、目をぎゅっと瞑って手を合わせる。 
757: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:43:29.23 ID:3+pD+bLQo
 乱れた髪をセットしなおし、噴き出す汗に苦戦しながらなんとかメイクを整える。 
  
 「卯月、ダッシュでこっちへ向かってきたんだろうけど……それでステージ大丈夫?」 
  
 凛が覗き込むように問うと、未だ呼吸の落ち着かない卯月は「う、うん……がんばるね」と力なく苦笑した。 
758: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:44:01.84 ID:3+pD+bLQo
 Pはギリギリまで調整役として事務局と行ったり来たりしているし、 
 未央は転ばぬ先の備えとしてステージ脇で既に待機を済ませている。 
  
 いま、卯月の様子をチェックできるのは凛しかいない。 
  
759: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:44:40.89 ID:3+pD+bLQo
  
 ニュージェネレーションと、未央、凛、卯月のソロがステージを終え、拍手と歓声が沸き起こる。 
  
 凛が卯月のサポートへ入って、ニュージェネのユニットとしての舞台はなんとかこなすことができた。 
  
760: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:45:08.72 ID:3+pD+bLQo
 ステージを終えた時の歓声を、Pは聞いていなかったのだろうか? 
  
 凛がそう疑問を内心で浮かべると、Pは嘆息した。 
  
 「俺の予測値が高過ぎたと云うこともあるかも知れん。 
761: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:45:56.01 ID:3+pD+bLQo
 ユニットの時は卯月を支えようと前面へ出て引っ張った。だが、その陰で卯月の存在感は薄れた。 
  
 逆にユニットを引っ張ろうとして、バネの瞬発力を使い切ってしまったから、凛 
 のソロのステージでは、いつもより少しだけ声の通りやダンスのキレが鈍かった。 
  
762: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:46:28.43 ID:3+pD+bLQo
 「その人に対して、凛は胸を張れるものを出せただろうか? 俺はそうは思わない」 
  
 ――お前は今日、一期一会の意識を忘れていた。 
  
 Pは、言葉を濁さずにはっきりと断言した。 
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