過去ログ - 渋谷凛「私は――負けたくない」
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81: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:58:32.24 ID:s8phhYh5O
「これも何かの縁だ、貰っといてくれよ」

凛が几帳面にも振り向くと、彼は名刺を片手で差し出している。

「……こないだの名刺とは違うみたいだけど」
以下略



82: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:59:02.10 ID:s8phhYh5O
「ああすまん、茶化す気はないんだよ。つい先日転職してね」

「要らない。別にアンタの名刺なんか貰ったところで何の足しにもならないし」

凛はそうピシャリと断って、回れ右を――しようとした。
以下略



83: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 00:59:32.15 ID:s8phhYh5O

「アンタ……それ……CGプロって……」

「んん? 君、うちのこと知ってるのか? 設立したてだ、って社長は云ってたんだけどなぁ……」

以下略



84: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:00:03.34 ID:s8phhYh5O
凛は、名刺から目を離せないまま、訥々と口を開く。

「……こないだ、社長のオジサンから……スカウトされたの」

「あ、そうなの!? なんだ、じゃあ話は早いじゃないか。時間空いてる? 事務所行こう」
以下略



85: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:00:33.92 ID:s8phhYh5O
「えぇ? あんなにアイドルを食い入るように見てたし、なんやかんや云っても少なからず興味あるんだろう?
 更には既にうちの社長からスカウト受けてて。こんなの断る理由なんか無いじゃないか」

「……だって、凡人の私が、あんな輝く世界でやっていけるとは思えないから」

以下略



86: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:01:02.23 ID:s8phhYh5O
「新しいことを求めて、何かを変えようと必死で藻掻いても、何も変わらなかった! 何も変えられなかった!」

 ――結局、大人や社会が敷いたレールの上を走って、いくつかの選択肢をつまむだけ。

「自由に走り回れることなんてない! それが赦されるのは、運命に選ばれた一握りの人間だけだよ!」
以下略



87: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:01:39.46 ID:s8phhYh5O
凛が目を開け、視線を上げると、彼は柔和な笑みを浮かべていた。

しかしその顔は同時に少しだけ哀しそうで――凛には、その表情の意味するところは判らなかった。

「確かに上手くいかないことも往々にしてあるさ。でも諦めずに希求することを忘れちゃいけないと思うね」
以下略



88: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:02:10.50 ID:s8phhYh5O
「俺の補佐をしてくれる人がたまに云うんだよ」

Pはバツが悪そうに、後頭部を掻いた。そして軽く咳払いをしてから、

「ま、自分の目の届く範囲だけが世界の全てってわけじゃないんだ。
以下略



89: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:02:48.62 ID:s8phhYh5O

凛は、何も云えずに立ち尽くした。

挑戦しなければ、手に入る可能性は確実にゼロ――

以下略



90: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:03:17.47 ID:s8phhYh5O
「確かに、アンタの云う通り……でも、アイドルなんてこれまでの生活とガラリと違う場所、本当に行けるの?」

そう、いま立っている分岐路は、全く未知の世界へ続いているのだ。

見たことのない土地を、地図も持たずに歩いているようなもの。
以下略



91: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:03:50.95 ID:s8phhYh5O
凛が小首を傾げたので、補足の言葉を続ける。

「その日、他のアイドル候補生の子たちが来るらしいから、会ってみてはどうだろうか。
 やる・やらないの結論を出すのは、それからでも遅くはないと思う」

以下略



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