842: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:32:57.64 ID:3+pD+bLQo
需要量と供給力のバランス――関係者を常に悩ませる問題だ。
こればかりは、今後こなれていくのを期待してもらうしかないだろう。
最終的なチケット販売数、三日間分で述べ四万枚。
843: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:33:37.45 ID:3+pD+bLQo
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
844: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:34:05.07 ID:3+pD+bLQo
大抵、音響を重視すると、会場規模は大きくても数千人に抑えられてしまう。
一万人以上の収容が可能なアリーナという箱において、
音響設計がきちんとした会場はここが唯一の選択肢と云って過言ではない。
845: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:34:32.91 ID:3+pD+bLQo
凛の控室に、ノックの音が響く。
扉を開けたのは、担当プロデューサー、P。
846: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:34:59.40 ID:3+pD+bLQo
「どうせここまできたら、もうやることはないんだ。スタッフの邪魔にならない範囲で、舞台の方へ行くか」
「うん、行く行く」
頷いた凛が、すっと滑らかな仕種で立ち上がり、颯爽と扉を開ける。
847: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:35:28.22 ID:3+pD+bLQo
突き当たりの角を折れると、客席のざわめきがよく聞こえるようになってきた。
もう、このすぐ先は、ステージだ。
そっと舞台袖から見る客席は満杯に埋まり、気が早くもところどころで蒼いサイリウムが光っていた。
848: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:35:56.96 ID:3+pD+bLQo
「……私は、ここへ立つため……社長に、プロデューサーに、スカウトされたんだね」
「俺も少し不思議な気分だ。勿論ここがゴールってわけじゃない。
でも、この光景は、この埋め尽くす観衆は、一つのマイルストーンになる」
849: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:38:46.61 ID:3+pD+bLQo
凛が、一歩、二歩と進んで、Pを振り返った。
黒を基調にした、シンプルながらも可愛さと格調高さを両立したドレスの裾が、ふわり、舞う。
850: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:39:13.82 ID:3+pD+bLQo
「今だから云っちゃおうかな」
しばらくPの目を無愛想に見据えていた凛が、微笑んだ。
「初めて会った時は、私のためにここまでしてくれるなんて、思ってなかった」
851: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:39:43.22 ID:3+pD+bLQo
凛がひとしきり思い出し笑いを終えて、ふぅ、と軽く息を吐いた。
「プロデューサー、私をここまで連れて来てくれてありがとう」
「……俺だけの力じゃないさ。凛自身の頑張りの結果だ」
852: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:40:12.95 ID:3+pD+bLQo
凛はやや上目遣いでPを見ている。少しだけ、云いにくそうに、息継ぎを入れた。
「だからプロデューサー、これからも、私のプロデューサーでいてよ。……いいよね?」
――こんな人生を進むことになったのはプロデューサーのせいだし、おかげだから。
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