95: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:05:57.40 ID:s8phhYh5O
 対して、その少女は、我方を振り返った凛を見て、口を半開きにさせ放心気味で呟いた。 
  
 「うわぁ……綺っ麗〜……」 
  
 期せずして発したであろう、その言葉が凛の耳に入り、少し眉をひそめた。 
96: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:06:30.56 ID:s8phhYh5O
 これには凛も面喰らった。 
  
 「あ、いや、ちょっと照れただけ。怒ってるわけじゃないから気にしないで。私、よく勘違いされるんだ」 
  
 バツの悪い顔で両手を振り、そう弁解すると、ようやく少女は頭の上下動を止めた。 
97: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:06:59.07 ID:s8phhYh5O
 ――あのPとかいう人の云っていた『私以外のアイドル候補生の子』なんだね、きっと。 
  
 これは、怖い女と云うファーストインプレッションを与えてしまったかも知れない。 
  
 凛は、心の中でだけ苦い顔をした。 
98: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:07:31.02 ID:s8phhYh5O
 「あ、あのー……何か……?」 
  
 黙り込んだ凛へ、少女は不安そうに、窺うような面持ちで尋ねてきた。 
  
 「ううん、何でもない。私もCGプロに用事があるから、ひとまず行こ? ここで突っ立ってても仕方ないし」 
99: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:08:03.17 ID:s8phhYh5O
  
 三階まで無言のまま昇ると、“CGプロダクション”と掲げられたドアが目に入る。 
  
 長年の汚れだろうか、そのアルミ扉はみすぼらしく、 
 嵌め込まれた磨りガラスは端が少し割れ、クラフトテープで補修されていた。 
100: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:08:31.60 ID:s8phhYh5O
 少女は、困ったように苦笑いをした。 
  
 「だ、大丈夫と……思いますけど…………たぶん」 
  
 あまり自信なさそうに答えるので、凛は不安を増した。 
101: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:09:05.55 ID:s8phhYh5O
 なまじ、真っ黒いオジサンや、正体のよく判らないPを完全には信用していない凛にとって、 
 この見るからにまともではなさそうな空気は、尻込みをさせるに充分だった。 
  
 さて、どうしたものか。 
  
102: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:11:01.62 ID:s8phhYh5O
  
  
 ―― 
  
 「おぉ、良く来てくれたね」 
103: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:11:31.81 ID:s8phhYh5O
 「こないだ、Pって人から、今日ここへ来るように云われて……」 
  
 「……ああ! P君が云っていた、“日曜に来る子”とは君だったのか! なんと奇遇なことだろう!」 
  
 ――まるで、オジサンは私が来ることを知らなかったみたい。 
104: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:12:02.16 ID:s8phhYh5O
 「でも、そのPさん、いないみたいだけど?」 
  
 「ああ、今日は彼は外回りをしているよ。原宿辺りに行ってるんじゃないかな」 
  
 社長が破顔して、「ささ、こっちへ坐って」とジェスチュアで促す。 
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