40:乾杯 ◆ziwzYr641k[sage saga]
2015/08/21(金) 23:05:13.56 ID:XKRiySpR0
「お、御大将」
「……うん? どうした」
「おそれながら、そろそろお控えになられたほうが。明日からの公務に差し障りがあるといけませんし」
「ああ、うむ、そうだな。ちと名残惜しいが、こいつを空にしたらお開きにするか」
言うや空の器を手前に引き寄せ、残り少なくなった中身を注ぎ入れる。響のほうにずいと差し出す。
「ほれ、一杯くらいなら支障あるまい」
「……どうも」
その強引さに半ば呆れるが、不快とまでは思わせないあたり、この老人の懐深さを感じさせる。
ちびちびと杯の端に口をつけながら、考える。この席を設けた理由を。
だが、いくら考えてもそれらしき解は見当たらなかった。
やや酔いが回った様子の老公。男と当たり障りのない世間話をしている。
何かと理由をつけては実家に孫を預けようとする娘夫婦への愚痴。
はたまた、深海棲艦出現以前の、大陸を転戦した際の武勇伝。
何かしらの思惑があるならどこかで切り出してくるはずだったが、そんな気配は微塵も窺えない。
あるいは本当に、純粋に食事を楽しむためだけに知己の二人を呼び出したのか。
そんなふうに考えを巡らせる最中、ふと下腹に違和感を覚えた。
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