1: ◆i2.pJBgDO.[sage]
2015/08/13(木) 22:02:25.95 ID:SYGMyPD1o
 
  セキセイインコのモモが彼女と出会ったのは、ある昼下がりのことだ。 
  その時彼は自慢の青い羽根を整えていて、くちばしがちょうど尾羽にさしかかっていた。 
  
  モモは羽づくろいの中でも特に尾羽を整えるのが好きだ。 
  長くてやりにくそうだねえと飼い主は言うけれど、やりにくいからこそやる甲斐もある。 
  それにここをしっかりしておくと見栄えが断然に違うのだ。 
  
  彼は熟練のくちばし捌きで尾羽を丁寧に梳きはじめた。 
  一回、二回。しかし三回目でふと彼は顔を上げた。 
  きゅっとすぼまった瞳孔の先、網戸の向こう、そこに何かがうずくまっていた。 
 
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2: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/13(木) 22:04:06.23 ID:SYGMyPD1o
  
  光るものが二つ。目のようだ。ぴくぴくと動く、おそらく耳。 
  なんだろう見たことがある。 
  あれはたしか…… 
  
3: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/13(木) 22:04:44.17 ID:SYGMyPD1o
  
  そしてその恐ろしさも知らないのに知っていた。 
  その姿を見ただけで、体に寒気が走ったのだ。 
  
 「モモちゃんが細くなってる」 
4: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/13(木) 22:05:11.82 ID:SYGMyPD1o
  
  その出会ってはいけない猫に見つめられて。 
  モモは気づかなかったふりをすることにした。 
  羽の中に顔をうずめて知らんぷりを決め込んだ。 
  
5: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/13(木) 22:05:46.57 ID:SYGMyPD1o
  
  両翼の先から尾羽の先まで。くまなく二周を終えても猫は帰っていなかった。 
  再び顔を上げてモモは困り果てて首を傾げた。 
  
  試しに少し歩いて相手を見やる。 
6: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/13(木) 22:06:27.07 ID:SYGMyPD1o
  
  っしゃあん、と大きな音がした。 
  モモは大きく飛びあがった。 
  大慌てでかごに駆け寄って飛び込んで。 
  ぶるぶる震えて細くなった。 
7: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/13(木) 22:06:55.28 ID:SYGMyPD1o
  
  けれど猫は次の日もやってきた。 
  
 「帰って!」 
  
8: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/13(木) 22:07:58.87 ID:SYGMyPD1o
  
  と、その時、不意に猫が口を開いた。 
  
 「わたし、謝ろうと思って来たの」 
 「え?」 
9: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/13(木) 22:08:30.09 ID:SYGMyPD1o
  
  なあんだ! モモはすっかり安心した。それなら怖がることなかったね! 
  
 「わたしと友達になってくれる?」 
 「いいよ!」 
10: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/13(木) 22:09:06.15 ID:SYGMyPD1o
  
  そして再びの網戸を叩く音。 
  っしゃあん、がしゃん、がっしゃあん。 
  
  モモはもちろんかごに逃げ帰って、もう猫なんて絶対に信じるものかと決めた。 
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