37: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:55:13.72 ID:9XUzSbFIo
こちらに背を向けて猫は寝そべった。
見えなくなった顔が、どんな表情を浮かべているかはもちろんわからなかったけれど。
まあでも言えることはあった。
38: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:55:40.99 ID:9XUzSbFIo
猫は背を向けたまま黙っていた。
ただ尻尾だけが時折ゆるりと揺れた。
「帰る」
39: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:56:19.43 ID:9XUzSbFIo
どういう意味かは分からなかった。
多分だけれど、猫自身もきっとわかってはいなかったのだとモモは思う。
ただ、少し考えてから答えた。
40: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:56:53.02 ID:9XUzSbFIo
その日以来、猫は姿を見せなくなった。
41: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:57:24.74 ID:9XUzSbFIo
つづく
42: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:40:53.20 ID:9XUzSbFIo
モモは網戸の外をのぞいた。
今日も猫は来ていない。
どんなに尾羽を梳いてみても、どんなに翼を整えてみても、猫はやって来なかった。
43: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:41:30.62 ID:9XUzSbFIo
ある日、飼い主たちが話をしているのが漏れ聞こえた。
ある家に餌をねだりにきていた猫が、誤って出された玉ねぎ入りの食事を口にして、中毒症状を起こしたそうだ。
動物病院に連れていかれたそうだけれど、その後のことは分からないらしい。
44: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:42:04.88 ID:9XUzSbFIo
モモは網戸の前にいた。
晴れの日も雨の日もそこにいた。
45: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:43:18.35 ID:9XUzSbFIo
あれからどれくらい時間がたっただろう。
モモにはとうにわからなくなっていた。
ただ、網戸の季節になると、やっぱりその前まで行って座り込んだ。
46: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:43:44.82 ID:9XUzSbFIo
モモは待っていた。
もう羽づくろいをするよりもうとうとしていることの方が多くなったけれど、それでもじっと待っていた。
「……?」
47: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:44:26.58 ID:9XUzSbFIo
「俺が先に狙ってたんだからな」
カラスの代わりに目の前に立った猫はそう言うと、網戸をがしゃんがしゃんと叩き始めた。
しばらくしてびくともしないことにイライラし始めた頃、彼は怪訝そうに声を上げた。
61Res/24.80 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。