過去ログ - インコ、網戸、それから猫
1- 20
42: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:40:53.20 ID:9XUzSbFIo

 モモは網戸の外をのぞいた。
 今日も猫は来ていない。
 どんなに尾羽を梳いてみても、どんなに翼を整えてみても、猫はやって来なかった。

以下略



43: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:41:30.62 ID:9XUzSbFIo

 ある日、飼い主たちが話をしているのが漏れ聞こえた。
 ある家に餌をねだりにきていた猫が、誤って出された玉ねぎ入りの食事を口にして、中毒症状を起こしたそうだ。
 動物病院に連れていかれたそうだけれど、その後のことは分からないらしい。

以下略



44: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:42:04.88 ID:9XUzSbFIo

 モモは網戸の前にいた。

 晴れの日も雨の日もそこにいた。

以下略



45: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:43:18.35 ID:9XUzSbFIo

 あれからどれくらい時間がたっただろう。
 モモにはとうにわからなくなっていた。
 ただ、網戸の季節になると、やっぱりその前まで行って座り込んだ。

以下略



46: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:43:44.82 ID:9XUzSbFIo

 モモは待っていた。
 もう羽づくろいをするよりもうとうとしていることの方が多くなったけれど、それでもじっと待っていた。

「……?」
以下略



47: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:44:26.58 ID:9XUzSbFIo

「俺が先に狙ってたんだからな」

 カラスの代わりに目の前に立った猫はそう言うと、網戸をがしゃんがしゃんと叩き始めた。
 しばらくしてびくともしないことにイライラし始めた頃、彼は怪訝そうに声を上げた。
以下略



48: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:44:52.98 ID:9XUzSbFIo

 モモは記憶を探った。
 でも目当てのものは見つからなくて、モモはうつむいた。

「思い出せないや……ぼく、記憶力ないから」
以下略



49: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:45:20.22 ID:9XUzSbFIo

「お前、その年でママなんて言ってるのかよ」

 猫は笑った。
 だがモモは静かに答えた。
以下略



50: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:45:51.11 ID:9XUzSbFIo

「あのクソババアは俺たちを置いて出ていった。ママなんて呼び方はふさわしくない」

 猫は心底怒っているようだった。

以下略



51: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:46:18.63 ID:9XUzSbFIo

「彼女は子供と別れて忘れられることを恐れていた」

 モモは続けた。

以下略



52: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 18:46:46.82 ID:9XUzSbFIo

「ごめん」

 モモはうつむいて繰り返した。

以下略



61Res/24.80 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice