過去ログ - いろは「先輩と、アフタークリスマス」
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名無しNIPPER
2015/08/16(日) 17:45:20.64 ID:HDGh0YhN0
それだけ言ってインカムのマイクを切り、静かに、堂々と手を挙げる。一色の驚いた顔が、いやに強烈に視界に入った。
いろは「あ、はい。では舞台にどうぞ」
促されて、舞台に上がる。大志がマイクを渡してくれる。照らされるスポットライトがやたらまぶしくて、滔々と現実感を奪っていった。
いろは「えー……では、クラスと名前をお願いします」
これは段取り通りの定型句だ。生徒会室で一色が練習していたのがなぜだか、懐かしく思えた。
八幡「三年F組比企谷八幡です」
「誰だー」「知らねー」というニュアンスの言葉が飛び交う。知ってるよ、お前らが俺のことを知らないくらい。
いろは「では、思いの丈をどうぞ!叫んじゃってください!」
八幡「……一色いろはさん!」
息を吸い込む、吐き出す。いつもやっていたことのはずなのに、俺は変わっていないはずなのに、なかなか、次の言葉が出てこなかった。
いろは「え?わたし!?」
一色がリアクションしてくれたおかげでわずかながら間がもった。視線を全力で一色に向け、言葉を継がせる。
八幡「あなたの笑顔が好きです。俺と付き合ってください」
ひゅーだか、いえーいだか、やるねーだとかいう言葉が入り乱れる。それに紛らわすように、右目をぱちぱちと瞑り、合図を送る。これは茶番であると。
一色は俺の言葉を受けてずいぶんと戸惑っていたようであるが、その合図に気付いてくれたようで落ち着きを取り戻し、俯いた。
いろは「……わたし、好きな人がいるんで…………ごめんなさい!」
一色は俺のことをちゃんと振ってくれた。
その言葉を受けて、舞台から降りると会場から「ドンマイ!」とか「次行こうぜ次」とか「まけんなよー」なんて言葉が聞こえてくる。
やばい、こんなにやさしくされたの生まれて初めてかもしれない。泣きそう。
一人目が見事玉砕したためか、そこから告白のハードルは下がり、舞台に上がるやつがぽつぽつと出始めた。
成功するものもいたし、もちろん振られるものもいる。中にはプロポーズ始めるカップルなんかもいた。
観衆はもれなく囃し立て、慰めの言葉をかける。
…………いや、知ってたよ。優しい言葉は俺個人ではなく、誰だか知らないけど振られた奴にかけられていたこと。
知ってた。知っていたけど…………さっきの俺の感動を返せ。
その後のビンゴ大会もつつがなく行われ(景品は地元商店街の方々が、安価で提供してくれた)大盛況のうちにクリスマスイベントは締められた。
そして、生徒会面々と参加部活動有志諸君は片付けに追われていた。
その最中、一色の姿を見かけたので話しかける。
八幡「さっきは助かったよ。話し合わせてくれてさんきゅ」
一色は声をかけられてこっちを見たが、すぐに俯き、言葉を探しているように見えた。
いろは「………………先輩は……やっぱりそういう手段を使うんですね」
俯いたままそれだけいうと、こっちを見る。一瞬その顔がどこか悲しげに見えたが、すぐに笑顔に戻して言う。
いろは「いえ、こっちこそ助かりましたー。あのままだと、グダグダになっていたと思うので」
八幡「おう」
その刹那のひっかかりにもやもやとしながらも片づけを続行させた。
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