4: ◆2YxvakPABs[saga]
2015/08/19(水) 23:44:00.08 ID:jRTVHHoQ0
――*――*――*――
積もった雪の上を歩く。
一面が白く塗りつぶされた世界は、まるで雲の上を歩いているかのような錯覚すら覚える。
一歩歩くたびに、ナナの足あとがしっかりと残っていた。しかし、それはやがて降った雪でかき消されるし、誰かの足あとによって上書きされる。
今のナナの状況のようで、思わず目を逸らしてしまった。
小学生の頃から、魔法少女が好きだった。
ふりふりの衣装に身を包み、悪い奴らを懲らしめたり、誰かを救ったり。そんな彼女たちに憧れを抱いた。
それと同時に、アイドルにも憧れた。アイドルと魔法少女は、ナナの中で共通点は多い。
ふりふりの衣装だったり、普通の女の子が変身するとかだったり、誰かに夢を与えたり。画面の中の彼女たちは最高にキラキラしていたし、ナナも夢を与えられた一人だ。
いつしか、ナナは声優を目指した。勉強もした。
それと同時に、アイドルも目指した。図々しい選択だと思ったが、そういう人がいることも知っている。
大好きな声優とアイドルを両方できる、歌って踊れる声優アイドル。二兎を追うものは二兎を得られないと言うが、二兎を追う者でなければ、二兎を得られる可能性は0だ。
そしてナナは、元プロデューサーさんに出会い、アイドルになる魔法をかけてもらった。夢に一歩近づけた。
でもそれは、シンデレラの魔法のように、時間が来たら消えてしまうような脆い魔法。
いや、ナナは今、シンデレラですらない。
シンデレラの活躍を指を咥えて見ている、姉のような立場だ。
こんな話がある。靴でシンデレラを探す王子に、自らがシンデレラだと思わせるため、姉たちはその足を切り落としてまでその靴を履くという話を。そして、すぐにその嘘はバレてしまう。また、姉が報われることはなく、最終的には目をくり抜かれ失明してしまう。
まさに、ナナは今その状況だ。履けもしないシンデレラの靴を、足を切り落としてまで履いて、シンデレラになろうとする。
自分を偽ってまで、アイドルに固執するナナは、端から見たらどう見えるのだろうか。痛々しくて、目を逸らしたくなるような姿に写っているのだろうか。シンデレラの靴を履く姉たちのように。
そして、やがて光さえも失ってしまうのだろうか。
そこまで考えて、ナナは身震いした。
「……嫌だ」
ポツリと言葉に漏れてしまう。
白い息に紛れた言葉。
プロデューサーの言うように、このままだとナナはアイドルですらいられなくなる。
「ナナは……どうしたら……」
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