過去ログ - 卯月「プロデューサーさんの、本当の幸せを」
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14: ◆8g8ZKJa8Ps[saga]
2015/08/24(月) 01:46:07.40 ID:20TbIrfu0
桃華
「Pちゃま、次のお休みは一緒に神戸に帰りましょう! お父様にも久しくあっておりませんし、いろいろお話したいんですの。

 ……どうしたんですの、Pちゃま。え? 次のお休みはしばらく取れない? どういうことですの? たしかにわたくしも皆様のおかげでお仕事が増えていますけど、さすがにお休みが取れないほどでは……あっ、Pちゃまのほうのお休みですのね。

 でもPちゃまは最近働きづめではありませんこと? ちひろさんに言って有給を取らせていただければ……それもダメ? どうしてですの? 労働者の権利を守るのが雇用者の最低限の務めだとお父様はおっしゃってましたわ。Pちゃまの有給が認められないなら、わたくし社長に直談判してまいります!

 は、離してくださいませ、Pちゃま! これはPちゃまの権利を守るための……! ……えっ、どういうことですの? 有給が全部、埋まってる? え? どういう意味ですの?

 ……そう、他の方との約束があって、そのために有給は使えないと……そうでしたの。つまりPちゃまは、わたくしのために使う余暇はないとおっしゃるんですのね?

 いえ、いいんですのよ。他の方の約束が先だったのですから。神戸へはわたくし一人で帰りますわ。ええ、大丈夫ですの。どうかご心配なさらず、桃華のことなど忘れて他の方と羽根を伸ばしてくださいまし。

 それでは、わたくしはこれで失礼いたします。レッスンがありますので!」

ちひろ
「……あれ、桃華ちゃん? どうしたの?」

桃華
「なんでもありませんわ。レッスンにいってまいりますの」

ちひろ
「え? まだ時間にはだいぶ早いけど……あっ、桃華ちゃんっ」

 Pちゃまにひどいことを言ってしまったことに耐えられなくて、あんな当てつけを言ってしまった自分が許せなくて、逃げ出すように事務所を飛び出しましたの。

 けれど、わたくしは立ち止まりました。こんなことではいけないと思ったのです。確かにわたくし以外の誰かのために有給をすべて使ってしまうPちゃまもPちゃまですけど、それを受け止めきれないのはわたくしの狭量さがいけないのですわ。自分の未熟を棚に上げて大切な方を傷つけてしまうなんて、櫻井の娘にあってはならないことですの。

 ですからわたくしはすぐに事務所に引き返しましたの。ちひろさんが言ったようにレッスンまではだいぶ時間がありましたし。……本当は、最近Pちゃまとお話できていないからレッスンの前にたくさんおしゃべりをしたかったのですけど……謝って、少しだけ甘えさせていただく時間くらいなら、まだ残っていますの。

 事務所に戻ると、Pちゃまの姿が見当たりませんでした。ちひろさんもいません。本当は声をあげて呼べばよかったのですけれど、この時のわたくしにはそれができませんでしたの。謝ると決めたのに、まだ踏ん切りがついていなかったんですのね。

 ですからわたくし、Pちゃまを探しましたの。そうしましたら事務所の奥から声が聞こえてきましたの。薄暗い廊下の先で、給湯室の灯りが洩れてましたわ。

 蛍光灯の光が、廊下の壁に影を落としていましたの。ぴったりと寄り添った、二つの影でしたわ。



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