過去ログ - 新選組〜あるいは沖田総司の愛と冒険〜
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82:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/28(月) 01:11:30.42 ID:mnWkzDnfO

女が、急ぎの用件を思い出したみたいにグラスに残った酒を干す。どうやらこの場には短刀も拳銃も出番はなくなったらしい。
俺は女に気づかれぬよう、安堵の息を長く吐いた。


「お食事中お邪魔しました。愛すべき俺さんのご出張が成功のうちに終わりますように」

「お気遣い感謝いたします。いや、思いもかけず楽しい時間になりました」

「おや、それは光栄です。……ところで先ほど、『神秘的』っておっしゃいましたわね」


完璧と言っていい社交的な笑顔で、首を微かに傾げる。この国の支配的地位にある白人連中が、何かの拍子に示すこの種の表情。俺にとってはいまだに謎だ。


「ああ、何か失礼に聞こえましたら、ご勘弁ください」

「いえ、そうじゃありません。ただ、そういった『神秘』ですけど、あなたご自身の出自に関しても、思い当たることはないかしら?」

「はい?」


女は柔らかな笑顔を崩さぬまま、軽く頷いて立ち上がった。そして俺が入ってきたところとは反対側の、レジのある出入り口へ歩いていった。

姿を消すまで、女が振り返ることはなかった。


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