21:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:27:08.26 ID:rVNZ4GiQo
櫻子を目の前にしていなければ、きっとこの気持ちはもっと早くに判明していたことと思う。たまたま中学までずっと一緒だったから見えてこなかっただけのことだ。私は最初の最初から……ずっと櫻子が好きなのだ。
心の戦いが終わってしまうと勝ち残った方が一気に幅を利かせるもので、私の行動・思考全てが「櫻子が好き」という前提に裏付けられていく。まだ否定したい気持ちが残っていないわけではないが、それを妙な納得が上回ってしまう。
バレンタインのチョコレート作りは今日帰ったらすぐに取り掛かる。明日は本番の日に向けて出かける先の下見やその他もろもろの準備に費やす予定だ。デート前日にせかせかとチョコを作っていては本番の日に寝不足になってしまいかねない。一世一代の日は万全な準備で迎えたかった。
気づけば授業の終わりを告げるチャイムが鳴っていて昼休みに突入していた。視線の先でクラスメイトがお昼ご飯なのであろう菓子パンを取り出している。櫻子のことを考えてまた頬が緩んでないかと心配になった私は顔に手を当てて確認し、机の上を片付けてお昼の準備を始めた。
「古谷ちゃんお昼一緒しよ〜」
「ええ。今日はお弁当ではないんですの?」
「今朝は忙しくて……休み時間の間に一足早く購買で買っといたんだ。チョココロネ」
「あら、いいですわね。私もたまに食べたくなります」
「おいしいよね〜」
袋が開かれると甘いチョコレートの香りがぽわっと漂った。ひとくちかじりつく寸前でその友人は「そういえば」と私の方に視線を向ける。
「確か明後日ってバレンタインデーだったよね……しくったー、なんでチョコのパン買っちゃたんだろ」
「まあまあいいじゃないですの。これはこれで美味しいでしょう」
「ところでさー、古谷ちゃんって誰かチョコ作る相手とかいるの?」
「えっ……?///」
「あ〜その顔! 絶対いるんだ!」
「ちょ、ちょっと……まあ、確かに作るんですけど、女の子ですわよ?」
「え、私っ!?」
「……あ。そういえばあなたの分も作らなきゃですわね」
「えええ〜〜! 私チョコあげる人の選択肢に入ってなかったの!?」
「ご、ごめんなさい……でもちゃんと作ってきますから。来週の月曜日を楽しみにしててくださいね」
友人は少しだけむすっとした後「ふふっ、うそうそ」と笑い飛ばし、コロネの大きな側にかじりついて尋ねてきた。
「女の子って誰? このクラスの人?」
「いいえ、中学の頃まで一緒だった子ですわ。ずっと幼馴染で……」
「あー、前に話してくれたことあったね! ……えっと、櫻子ちゃんだっけ?」
「あ、そうですわ」
どうやら私は過去に櫻子のことを話していたらしい。何を喋ったかは覚えていないが、確かにこの学校で知り合った子に櫻子について話したことは何回かあった気がする。
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