29:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:33:12.53 ID:rVNZ4GiQo
「でも今日わかったんですわ……私たちは離ればなれになんかなっていない、むしろ昔よりも距離が近くなったんだって」
「…………」
「デート……ですわよね、これって。昔だったらきっと、恥ずかしがっちゃってうまくいかなかった……けどそれが今なら、こんなに楽しくうまくいくものになってる。それは私たちがお互いに、今日という日を楽しもうとしていたからですわ」
「……あの時楓がクッキーを作ろうって言ってくれて本当によかった。こうしてまたあなたの隣で、あなたと一緒にいることができてるのも……あのクッキーのおかげかもしれない」
「本当は割と近くにいるのに、無性に引き離された気がしてたから……だからなかなか会うこともなかったんでしょう。“会えないもの”だと思い込んでしまっていて」
「でももうそれも終わり。私たちはいつだって近くに……作ったお菓子が温かいうちに届く距離にいますわ。それを忘れないで、これからもずっと……」
「う……うぅぅ……///」
「……えっ?」
櫻子の瞳が急にうるみ、大粒の涙をこぼした。
驚いた私は一歩近づいて櫻子の手を取った。大きく見開かれた目からはとめどなく涙が流れて、しかしそれをぬぐうこともなく頬に伝わせていた。
「も、もう……なんで泣いちゃってるんですの? 私まだ全部言ってないのに……」
「うっ、うぅぁぁ、あぁぁぁ……///」
「あなたが泣いたら、私までっ……」
櫻子の泣き顔につられて、抑えていた何かが決壊してしまったように私も泣いてしまった。コートにいくつもの雪をくっつけた櫻子を抱きしめ、肩口に顔を押し当てて涙を我慢する。
櫻子はやはり大きくなっていた。大きくて、とても暖かかった。気づけば櫻子と同じくらい自分も泣いてしまっていて、落ち着くのには時間がかかってしまいそうな気がした。
本当はこの後……思いの丈を告白しようとしてたのに。
スムーズに格好よくいきたかったのに。
でも当たり前ですわよね。最初に出会ってから今の今までずっと好きだったのに、気づこうとしなくて、気づかなくて……やっとここまできて気づけたんですから、今更格好つける余裕も何もありませんわ。
私を抱きしめるその腕が、私に涙を追加させていく。
櫻子の優しさが、櫻子の想いが、櫻子の存在が……身体全体を通して、触れ合うほどに近い心を通して流れ込んでくる。
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