過去ログ - 向日葵「ずっと一緒に」
1- 20
3:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:12:12.51 ID:rVNZ4GiQo



「――それでは、今回はここまでにします。次の授業は今日やったところを少し復習してから、新しいところを進めていきましょう」


気づけば授業は終わろうとしていた。チャイムはギリギリ鳴っていなかったが、今が四限目で次が昼休みということもあり、生徒たちは先生が終わりを告げる間すでに教科書類を片付けたり、購買の競争に参戦するため財布を持ちすぐに席を立つ準備をしたりと物音騒がしくしていた。その音で我に帰る。

私はお弁当を作ってきているので購買戦争に急ぐこともないのだが、考え事にふけっている間すっかり板書を忘れてしまっていた。チャイムが鳴って戦争組がぱたぱたと教室を出て行く中、素早く板書を書き留める。

もう少しで書き終わるというところに、可愛らしいバンダナに包んだお弁当を提げた友人がやってきた。


「古谷ちゃん、お弁当一緒しよ?」

「ええ、ちょっとこれを写したらすぐに……」

「あれ、まだ写せてなかったの? 珍しいね〜」

「ちょっと気を抜いていたものですから…………よし、できた」

「隣いい?」

「ええ、どうぞ」


高校の授業は中学よりも大変だ。一年生とはいえ、ここは県下でも名のある進学校。中学の勉強法ではもうだめなんですよと各教科担当の教師は口々に言う。「面倒見のいい学校だから、そんなに張りつめなくても普通にコツコツやってれば大丈夫だよ」……なんてOGでもある撫子さんは言ったけれど、私は未だに緊張のギアというものを心から全部下げられない。

私の成績は悪いわけではないが、それでも気を抜いたらあっという間に置いていかれてしまうだろう。周りのクラスメイトもみな受験戦争を勝ち抜いてきた者なのだ。

少し荒く走り書きになってしまったノートを閉じ、弁当を取り出す。いつもやってきてくれるクラスメイトと一緒にお昼ごはん。ありがたいことに、私はこの新天地でもいい友達に恵まれた。


しかし私の頭の中は、目の前の子とは別の女の子のことでいっぱいになっていた。

ノートをとっていなくてもチャイムが鳴ればすぐに道具を片付けてしまうような、そんな他校の女の子のことを。


私の名前は古谷向日葵。

大室櫻子とは別の高校に通っている、もうすぐ二年生。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
62Res/95.49 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice