32:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:35:47.04 ID:rVNZ4GiQo
〜
寒さに震える身体を引きずって帰った。
コートについた雪はすっかり溶けて沁みこんでしまい、私は死んでしまいそうなくらい凍えていた。
だが一番凍えていたのは……私の心だった。
痛い、痛い、痛い。
氷の刃で心臓を突き刺されたように、
身体の内から大きなつららが外に出ようと突き出るように、
胸が、心が、痛かった。
もはや感覚もなにも無いに等しい状態で門を開け、私は家にたどり着いた。
すぐに楓が飛んできた。流れ落ちた涙の軌跡が凍るくらいぼろぼろになった私を見て、一体何があったのかを泣きながら聞いてきた。
言葉を話す力さえ残っていない私は、そのまま服を脱がされて温かい風呂にいれられた。
頭に打ち付けるぬるま湯が私にとっては熱すぎて、でも凍えた部分はしびれながらも元に戻っていった。
そうして背中を流す楓の優しさは凍りついていた心を溶かし、私は音が反響する浴室であることにも関わらず大声で泣いてしまった。
全部、全部、溶けて壊れて流れていった。
何もかもが、全部。
62Res/95.49 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。