34:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:37:05.13 ID:rVNZ4GiQo
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【後編】〈 MIRACLE MEETS 〉
「あっ、古谷ちゃん……!!」
「……お久しぶりです、皆さん」
二月も下旬に入った平日。登校するなり私は友人たちに囲まれた。
「急にどうしちゃったの? 風邪はもう大丈夫?」
「ええ、今はもう治ってますわ」
「もうびっくりしたよ〜。ついこの前まで元気そうだったのに、急に風邪で何日も休んじゃうんだから!」
「ふふ、ごめんなさい……今日からはまた今まで通りにいけますから」
(……そう、今まで通りに)
バレンタインデーの翌日、私は真冬だというのにあまりの熱さと汗に濡れた布団の感覚で目が覚めた。
体温計が示した数値は……39.1℃。こんな大風邪を引いたのは久しぶりだった。
だがあの吹雪の夜に雪に濡れた身体を労わることもせず、ずっと外で泣きはらしていたのだから……当然と言えば当然だった。
親も楓も大変心配そうであったが、普通の風邪と同じように養生するだけで体調は徐々によくなっていった。今は熱も平熱に戻っており、今日から元の学校生活に戻れる。
「あ、そうそう……これ皆さんにバレンタインのチョコ。今更なんですけど……風邪引く前から作ってあったので」
「あはははは、変なとこまで律儀なんだから……ありがとー」
「うわーなにこれ、めっちゃ美味しい〜♪」
「冬場ですけどなるべく常温で保存したので、味は落ちてないと思うんですけど……大丈夫でしたか?」
「大丈夫どころじゃないよ! 私がもらった中で一番おいしいんだけど!」
「ちょっとずるい〜、わけてわけて!」
数日遅れではあるが友人たちはチョコレートを楽しんでくれた。私はそんな様子をほほえましく見ながら自分の席にすわり、小さく息をつく。
このバレンタインチョコが視界に入るたびに、あの日のことを思い出してしまうから……だから早く処理してしまいたかった。
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